序章:君たちの直感は、残念ながら間違っている
突然ですが、君たちに一つ質問をします。直感で答えてください。
Q. 次のAとB、10年間で見ると「高い買い物」はどっちだと思いますか?
- A: 最新のハイスペックなパソコン(一括払い 10万円)
- B: 動画見放題のサブスクリプション(月額 980円)
どうでしょう。「そりゃあパソコンでしょ。10万円もするし、サブスクなんて月1,000円もしないじゃん」と思いましたか?
もしそう思ったなら、君はすでに社会のカモになる素質十分です。厳しい言い方をしてごめんなさい。でも、これが社会に仕掛けられた「罠」なのです。
電卓を叩いてみましょう。
- Aのパソコン: 100,000円(これ以上増えません)
- Bのサブスク: 980円 × 12ヶ月 × 10年 = 117,600円
なんと、月額980円のサブスクの方が、10万円のパソコンよりも1万7,000円以上も高いのです。
「えっ、たったそれだけの差?」と思うかもしれません。ですが、ここで重要なのは金額の差ではありません。**「お金の性質の差」**です。
今日は、大人が君たちに隠している(あるいは大人自身も気づいていない)、この**「固定費」の正体と、絶対に手を出してはいけない「リボ払い」という悪魔のシステム**について話します。
これは説教ではありません。君たちがこの先、搾取される側(奪われる側)に回らないための、生存戦略の話です。
第1章:サブスクという名の「固定費」は、HPを削る毒である
ゲームで例えてみましょう。
君が冒険に出るとします。敵と戦ってダメージを受けたら回復薬を使いますよね。これは「変動費」です。必要な時に必要なだけ使うお金です。
では、「固定費」とは何か。
それは、**「歩いているだけで、1歩ごとにHP(体力)が1ずつ減っていく呪い」**のようなものです。あるいは、毒の沼地を歩き続けている状態と言ってもいいでしょう。
「たった数百円」が思考を麻痺させる
企業は賢いので、君たちに「11万円払ってください」とは言いません。「月々たったの980円でいいですよ」と耳元で囁きます。
お小遣いでも払える金額に見えますよね。
でも、先ほどの計算を思い出してください。1つならまだしも、これがもし3つ、4つと増えたらどうなるでしょう?
- 動画サービス:980円
- 音楽サービス:980円
- ゲームの月額課金:500円
- スマホのオプション:300円
合計:月額2,760円。
1年間で33,120円。
10年間で33万1,200円です。
何も残らない「消費」に、中古車が買えるくらいの金額が消えていくのです。「使わなくなったら解約すればいいや」と君は思うでしょう。しかし、それができないように人間の脳は作られています。
第2章:なぜ解約できないのか? 「サンクコスト」の呪い
ここで2つ目のキーワード、**「サンクコスト(埋没費用)」**について教えます。これは人間心理のバグのようなものです。
例えば、君があまり面白くない映画を見に行ったとします。最初の30分で「これはつまらない」と分かりました。
論理的に考えれば、すぐに映画館を出て、残りの時間を勉強や遊びに使った方が有意義ですよね。チケット代はもう戻ってこないのですから。
でも、ほとんどの人は最後まで見てしまいます。
「せっかく1,800円払ったんだから、元を取らないともったいない」
そう思ってしまうのです。これがサンクコスト効果です。
「解約忘れ」を狙われている
サブスクも同じです。「今月は忙しくて全然見てないな」と思っても、「でも今までずっと払ってきたし、解約した瞬間に見たくなったら損だ」とか、「会員ランクが下がるのが嫌だ」という心理が働きます。
企業はそれを完全に理解しています。
**「初月無料」**というキャンペーンをよく見かけませんか? あれは、「まずは契約させて、解約を忘れさせる(あるいは面倒くさがらせる)」ための撒き餌です。
君の銀行口座というバケツに、小さな穴をいくつも開けられている状態を想像してください。水(お金)をいくら注いでも、その穴からチョロチョロと漏れ出し続けます。
お金持ちになるための第一歩は、たくさんの水を注ぐこと(稼ぐこと)ではありません。まずバケツの穴(固定費)を塞ぐことです。
第3章:すべてのサブスクが悪ではない。「資産」になる固定費を見極めろ
ここまで「固定費は毒だ」と言いましたが、実は**「良い毒(薬)」もあります。 すべてを解約して、ただお金を貯め込むことが正解ではありません。重要なのは、それが「消費(浪費)」なのか、それとも将来のリターンを生む「投資(資産)」**なのかを見極めることです。
「貧乏になる980円」と「金持ちになる980円」の違い
例えば、以下のサブスクはどうでしょう?
- Kindle Unlimited(本の読み放題): 月額980円
- Adobe Creative Cloud(画像・動画編集ソフト): 月額数千円
- ChatGPT Plus(高性能AI): 月額約3,000円
これらは、使い方次第で君のスキルや知識を増幅させるツールです。
本を読んで知識を得れば、ライバルより賢くなれます。動画編集スキルを身につければ、将来仕事を受注できるかもしれません。AIを使いこなせば、作業時間を劇的に短縮できます。
これらは**「資産になるサブスク」**です。
判断基準は「未来の時給」
判断基準は非常にシンプルです。契約ボタンを押す前に、こう自問してください。
「これを毎月払い続けることで、将来の自分の『時給』や『能力』は上がるか?」
- 「暇つぶしになるだけ」→ 消費(極限まで減らすべき)
- 「稼ぐ力や知識がつく」→ 投資(恐れず使うべき)
本当のお金持ちは、娯楽のためのサブスクは徹底的にカットしますが、自分の脳みそやスキルを強化するためのツールには惜しみなくお金を使います。
冒頭の「パソコン」もそうです。YouTubeを見るだけなら高い買い物ですが、それでプログラミングを覚えるなら、10万円は安すぎる投資になります。
この「使い分け」ができるようになれば、君はもう大人の入り口に立っています。
第4章:【閲覧注意】悪魔のシステム「リボ払い」
ここからが本記事の核心です。固定費の話はジャブ(軽いパンチ)です。ここから話すのは、当たれば立ち上がれなくなる**「即死トラップ」です。 その名は「リボ払い(リボルビング払い)」**。
クレジットカードを持つようになると、必ずと言っていいほど「リボ払いに設定しませんか? ポイントあげますよ」という甘い勧誘が来ます。
絶対に、何があっても、「はい」と言ってはいけません。
複利の力を「敵」に回す恐怖
アインシュタインは「複利は人類最大の発明」と言いましたが、リボ払いはその複利を**「借金を雪だるま式に増やす装置」**として逆用します。
具体的にシミュレーションしてみましょう。
君はずっと欲しかった30万円の最新ハイエンドスマートフォンを買うことにしました。
でも、手持ちのお金はありません。そこで、リボ払いを使います。
【地獄の契約条件】
- 購入額: 300,000円
- 金利(実質年率): 15.0%(一般的なリボ払いの金利)
- 毎月の支払額: 5,000円(元金と利息を合わせて5,000円払う設定)
「月々5,000円なら、お小遣いやバイト代で楽勝じゃん!」
そう思った君。その「楽勝」が、どれほどの代償を伴うか計算したことはありますか?
衝撃のシミュレーション結果
私が計算してみました。結果を見て、震えてください。
| 項目 | 結果 |
| 返済回数 | 102回(8年6ヶ月) |
| 購入額(元金) | 300,000円 |
| 支払う利息の合計 | 209,242円 |
| 支払総額 | 509,242円 |
どうですか?
30万円のスマホを買ったはずなのに、最終的には50万円以上払うことになります。
20万円以上も、ただ「リボ払いを使った」という理由だけで銀行にプレゼントするのです。その20万円があれば、何が買えましたか?
しかも、払い終わるのは8年半後です。
8年半後、君は何歳ですか?
その頃には、その「最新スマホ」はとっくに壊れてゴミになっているでしょう。でも、過去のゴミの代金を、毎月毎月払い続けなければならないのです。
なぜこんなことになるのか?
「毎月5,000円払っている」つもりでも、その内訳が恐ろしいことになっているからです。
最初の月の支払いを見てみましょう。
- 借金残高: 300,000円
- 1ヶ月の利息: 300,000円 × 15% ÷ 12ヶ月 = 3,750円
- 支払額: 5,000円
5,000円払ったうち、3,750円が利息として消えます。
元金(借金そのもの)は、たったの1,250円しか減っていません。
まるで、下りのエスカレーターを全力で駆け上がっているようなものです。走っても走っても(払っても払っても)、全然上に着かない(借金が減らない)。
これがリボ払いの正体です。
第5章:契約書は、君の「自由」を奪う手錠である
最後に、もう少し大きな視点の話をします。
サブスクもリボ払いも、すべては**「契約」**に基づいています。
君たちがこれから大人になると、たくさんの契約書にサインすることになります。
携帯電話の契約、アパートの契約、就職の契約、クレジットカードの契約。
「利用規約に同意する」のチェックボックスに気軽にチェックを入れますが、あれは**「法律的に約束した」**という意味です。
「知らなかった」「読んでなかった」は通用しません。
キャッシュフローが止まれば、人生は詰む
リボ払いや多すぎる固定費で首が回らなくなると、どうなるか。
「信用情報(ブラックリスト)」に傷がつきます。
そうなると、本当に必要な時にお金が借りられなくなります。
- 起業して自分の店を持ちたいのに、資金が借りられない。
- 家族と住む家を買いたいのに、ローンが組めない。
- 新しいスマホの分割払いですら断られる。
たった一度の「ま、いっか」という安易な契約が、将来の君の**「挑戦する自由」や「住む場所を選ぶ自由」**を奪ってしまうのです。
君が勉強して得ようとしている「知識」や「学歴」は、攻めるための武器です。
しかし、今日話した「リテラシー(お金の知識)」は、君自身を守るための**「盾」**です。
どんなに攻撃力が高くても、盾を持たずに戦場に出れば、一瞬でやられてしまいます。
結び:搾取される側にならないために
長い話を読んでくれてありがとう。
今日の話を3行でまとめます。
- 「消費のサブスク」は解約し、「投資のサブスク」を選べ。
- リボ払いは「未来の時間を売る行為」だ。絶対に手を出すな。
- 契約書にサインする前に、必ず「総額」と「10年後のコスト」を計算しろ。
社会は、知識のない者からお金を吸い上げるように設計されています。
でも、今日この仕組みを知った君は、もう「カモ」ではありません。
「月々〇〇円でいいですよ」と甘い言葉をかけられたら、心の中でこう呟いてください。
「で、トータルいくら払うことになるの?」
賢く生きてください。君の未来は、君自身が守るのです。
【読者特典】親子で実践!リボ払い地獄計算シート
「本当にそんなことになるの?」と疑っている君のために、実際に自分の手で計算できるツールを特典として用意しました。
ExcelやGoogleスプレッドシートに、以下の表をコピー&ペーストしてみてください。数字を変えるだけで、未来の支払額が自動計算されます。
契約ボタンを押す前に、必ずこのシートで「未来」を見てください。
▼ リボ払い地獄計算シートの作り方
- 新しいExcelまたはGoogleスプレッドシートを開きます。
- セル
A1にカーソルを合わせ、以下の内容を入力してください。
【入力する計算式リスト】
| セル | ここに入力する値・数式 | 説明 |
| A1 | 商品の値段(円) | |
| B1 | 300000 | ←ここに欲しいものの金額を入れる |
| A2 | リボ払いの年利(%) | |
| B2 | 15 | ←カード会社の年利(通常15~18%) |
| A3 | 毎月の支払可能額(円) | |
| B3 | 5000 | ←月々払う金額を入れる |
| A4 | 完済までの月数 | |
| B4 | =NPER(B2/100/12, -B3, B1) | ←自動計算(エラーなら支払額が少なすぎます) |
| A5 | 完済までの年数 | |
| B5 | =B4/12 | ←これが「借金を背負う期間」です |
| A6 | 支払総額(円) | |
| B6 | =B4*B3 | ←最終的に払う金額 |
| A7 | ムダに払う利息(円) | |
| B7 | =B6-B1 | ←本来払わなくてよかったお金 |
<試してみよう>
B3(毎月の支払額)を「3,000円」に書き換えてみてください。
おそらく計算エラーが出るか、とんでもない年数が表示されるはずです。これは**「毎月の利息すら払いきれておらず、借金が永遠に増え続ける状態」**を意味します。
免責事項
本記事は金融リテラシー向上を目的とした教育的なコラムであり、特定の金融商品の勧誘や、個別の財務アドバイスを目的としたものではありません。記事内のシミュレーション数値は概算であり、実際の契約条件やクレジットカード会社によって計算方法(日割り計算の有無など)が異なる場合があります。特典の計算シートについても、学習用の簡易計算モデルであり、正確な支払額を保証するものではありません。契約の際は、必ずご自身の責任において利用規約をご確認ください。