学校では教えない「お金の正体」。なぜそのスマホゲームは無料で遊べると思う?

こんにちは。今日は、学校の先生や親御さんがなかなか教えてくれない、でも生きていく上で国語や数学よりもはるかに大事な**「お金と世の中の仕組み」**について話をしましょう。

少し難しい話に聞こえるかもしれませんが、安心してください。君が普段コンビニで買っているペットボトルや、スマホに入っている無料ゲームの話です。

これを読み終わる頃には、君の目には**「世界が少し違って見える」**ようになっているはずです。

1時間目:タダより高いものはない?「無料ゲーム」の正体

まず最初に、君たちの手元にあるそのスマートフォンについて考えてみましょう。 App StoreやGoogle Playには、驚くほどクオリティの高いゲームが無料で溢れていますよね。美しいグラフィック、壮大な音楽、快適な操作性。

ここで一つ、大人として意地悪な質問をします。

「なぜ、開発会社は君に無料でゲームを遊ばせてくれるのでしょうか?」

開発会社の人は、ボランティア団体ではありません。彼らにも家族がいて、生活費が必要です。ゲームを作るには、何十人、何百人ものプログラマーやデザイナーが働き、数億円という莫大な開発費がかかっています。サーバーを維持する電気代だけでも毎月数百万円かかります。

それなのに、なぜ「基本プレイ無料(Free to Play)」なのか。ここには、ビジネスモデル(儲けの仕組み)の巧妙な罠と、天才的な発明が隠されています。

「課金する人」と「商品になる人」

無料ゲームの収益構造は、大きく分けて2つのパターンしかありません。

  1. 一部の「王様」が全員の分を払っている(アイテム課金型)
  2. 君たちの「時間」が売られている(広告収入型)

一つ目のパターン。これは、プレイヤー全体のわずか数%しかいない「重課金ユーザー(ガチャなどで毎月何万、何十万円も使う人)」が、残り90%以上の無料ユーザーのプレイ代金を肩代わりしている構造です。 開発者にとって、無料ユーザーである君たちは**「課金ユーザーが気持ちよく遊ぶための対戦相手(賑やかし)」**としての役割を期待されています。言い方は悪いですが、課金プレイヤーという王様を楽しませるための「舞台装置」の一部なのです。

そして二つ目のパターン。これが今日覚えてほしいポイントです。 ゲームの途中で「30秒の動画広告を見ればライフ回復」といった場面がありますよね。あの時、何が起きているか分かりますか?

広告主(企業)が、ゲーム会社に「お金」を払っています。 その対価として、ゲーム会社は広告主に、君の「30秒間」と「意識」を差し出しているのです。

ネットの世界にはこんな格言があります。

「商品にお金を払っていないなら、君自身が商品である」

無料ゲームにおいて、君は「客」ではありません。君の「時間」や「操作データ」こそが、広告主に売られる「商品」なのです。 この構造を理解せずに「あー、タダで遊べてラッキー」と思っているうちは、君は仕掛ける側の手のひらで転がされているに過ぎません。

2時間目:160円のペットボトル、中身の値段を知ってるか?

次に、コンビニの話をしましょう。 部活帰りに喉が渇いて、160円でお茶やスポーツドリンクを買うことがあると思います。

さて、ここでクイズです。 その160円のうち、「飲み物そのもの(液体)」の値段はいくらだと思いますか?

50円? 80円? ……残念。正解は、商品にもよりますが、おおよそ**「数円〜10円程度」**だと言われています。お茶であれば茶葉と水、ジュースなら砂糖水と香料。中身の原価は驚くほど安いのです。

「詐欺だ!」と思いますか? でも、これは詐欺ではありません。これが**「商売(ビジネス)」**です。 では、君が払った残りの150円はどこに消えたのでしょう? これを分解(分析)してみましょう。

見えないコストにお金を払っている

160円の内訳を想像する力、これを**「原価意識」**と言います。

  • 容器代(30〜40円): 実は中身よりペットボトル本体とキャップ、ラベルの方が高いことが多いのです。
  • 広告宣伝費: テレビCMで有名な女優さんが美味しそうに飲んでいますよね? そのギャラは、君が払った160円に含まれています。
  • 物流費: 工場からトラックで運び、倉庫で保管し、またトラックでコンビニまで運ぶ。運転手さんの給料やガソリン代です。
  • 小売店の利益: コンビニも儲けなくてはいけません。明るい照明、24時間営業の冷蔵庫の電気代、店員さんの時給。これらを賄うために、コンビニは数十円の利益を上乗せします。

君が160円払って手に入れたのは、「喉を潤す水分」だけではありません。 **「いつでも、どこでも、冷えた状態で、清潔に、手軽に飲める」という『便利さ』**に対してお金を払っているのです。

「価格」はどうやって決まる?

ここで気づいてほしいのは、**「モノの値段(価格)は、原価(材料費)の積み上げで決まるわけではない」**ということです。

もし原価だけで決まるなら、ルイ・ヴィトンのバッグはあんなに高くなりません。材料の革代だけなら数千円〜数万円でしょう。でも実際は数十万円で売れます。 なぜか? それは、作り手が**「価格決定権」**を持っているからです。

「このブランドには価値がある」とみんなが思えば、値段はいくらでも高くできます。 逆に、どこにでもある似たような商品(コモディティと言います)は、価格競争に巻き込まれてどんどん安くなります。

世の中には2種類の人間がいます。

  1. 「価格を受け入れる人(プライステイカー)」:言われた値段で買い、言われた給料で働く人。
  2. 「価格を決める人(プライスメーカー)」:商品の値段を自分で決め、自分の給料(利益)を自分でコントロールできる人。

君が将来なりたいのは、どちらですか?

3時間目:誰が一番儲かっているのか?(商流の謎)

さて、ここからが少し難易度の高い「上級編」です。 先ほどのペットボトルの話で、一番「美味しい思い」をしている、つまり利益率が高いのは誰だと思いますか?

  • 一生懸命お茶の葉を作った農家さん?
  • 工場でお茶を詰めたメーカー?
  • 毎日休まず営業しているコンビニ?

実は、ビジネスの世界では**「川上(かわかみ)」「プラットフォーム」**が強い力を持つ傾向があります。

汗をかかずに儲ける「仕組み」の持ち主

例えば、スマホゲームの話に戻りましょう。 君がゲームで1000円課金したとします。その瞬間、何もせずに自動的に**300円(30%)**を持っていく人たちがいます。

誰でしょう? そう、**Apple(iPhone)Google(Android)**です。

ゲーム開発会社は、必死に面白いゲームを作り、バグを直し、広告を出して集客します。ものすごい努力とリスクを背負っています。 しかし、AppleやGoogleは「場所(App Store)」を提供しているだけです。それだけで、世界中のあらゆるゲームの売上から30%を自動的に徴収します。これを「プラットフォーム・ビジネス」や「ショバ代」と呼びます。

ペットボトルの場合も似ています。 本当に儲かっているのは、もしかしたら飲料メーカーではなく、**「自動販売機を設置する権利を持っている土地のオーナー」かもしれません。あるいは、世界中でその飲料ブランドのロゴを使う権利を持っている「ライセンスホルダー」**かもしれません。

彼らは、自分が汗水垂らして働くのではなく、**「他人が働けば働くほど、チャリンチャリンとお金が入ってくる仕組み」**を持っています。

労働収入と資産収入の違い

君たちのお父さんやお母さんの多くは、会社に行って働き、その対価としてお給料をもらっています。これを**「労働収入(フロー所得)」**と言います。自分が動くのを止めたら、収入も止まります。これは「原価(自分の時間と体力)を切り売りしている」状態とも言えます。

一方で、先ほどのAppleや土地のオーナー、あるいは会社の株主などは、**「資産収入(ストック所得)」**を得ています。仕組みや権利が働いてくれるので、寝ていてもお金が入ります。

中学生の君に今すぐ「投資をしろ」「株を買え」とは言いません。 ただ、**「世の中には、働いて稼ぐ以外に、仕組みで稼ぐルートが存在する」**という事実だけは、強烈に覚えておいてください。

これを知っているか知らないかで、君の将来の「働き方」の選び方は劇的に変わるはずです。

4時間目:君たちはどう戦うか(リテラシーという武器)

ここまで、「搾取される消費者」から「仕組みを作る生産者・オーナー」の視点へと話を展開してきました。 少し怖い話だったかもしれません。「大人は汚い」と思ったかもしれません。

でも、資本主義というゲームのルールがそうなっている以上、ルールを知らずにプレイするのは「目隠しをしてサッカーをする」ようなものです。

では、中学生の君に今できることは何でしょうか?

1. 「なぜ?」と疑うクセをつける

コンビニに入ったら、商品を眺めて心の中で分析してください。 「このお菓子、新商品で150円もするけど、箱が大きいだけで中身少なくないか? なぜパッケージをこんなに派手にしてるんだ?」 「このYouTuber、なんでこの商品をこんなに激推ししてるんだ? 裏で企業案件(広告)が動いてるんじゃないか?」

モノの値段や情報の裏側にある**「大人の事情」**を推測してください。それがビジネスセンスを磨く第一歩です。

2. 「作る側」のスキルを学ぶ

ただの消費者でいたくないなら、小さなことでもいいので「生産者」になってみてください。

  • ゲームで遊ぶだけでなく、プログラミングを勉強して簡単なゲームを作ってみる。
  • YouTubeを見るだけでなく、動画を編集して投稿してみる。
  • ブログやSNSで、誰かの役に立つ情報を発信してみる。

「1円」でもいいから、自分自身の力で(お小遣い以外で)お金を生み出す経験をすると、世界が変わります。 「あ、これを作るのってこんなに大変なんだ」 「こう工夫したら、人が見てくれた!」

その経験こそが、将来君が「価格決定権」を持つための種になります。

3. 学校の勉強を「武器」だと思う

最後に、一番つまらないアドバイスをします。学校の勉強をしてください。

「なんだ、結局それかよ」と思いましたか? でもね、数学ができれば複雑なお金の計算や確率(リスク)の計算ができます。国語ができれば、人を動かす文章が書けます。英語ができれば、日本の人口が減っても世界中の人を相手に商売ができます。社会を知っていれば、歴史の流れから未来を予測できます。

勉強は、先生に褒められるためにやるのではありません。 将来、誰かに騙されないため、そして自分がルールを作る側に回るための「最強の武器」を手に入れるためにやるのです。

ホームルーム(まとめ)

今日の授業はここまでです。

  • 無料ゲームは、君の時間を売って儲けている。
  • 160円のペットボトルの原価は数円。残りは「仕組み」への支払い。
  • 価格を決める権利(決定権)を持つ人が、一番強い。
  • 「消費する側」から「仕掛ける側」への視点を持つこと。

この視点を持って街を歩いてみてください。 今まで「ただの風景」だったものが、すべて「誰かのビジネスの仕掛け」に見えてくるはずです。そうやって世の中の解像度を上げていくことが、君が大人になった時に自由を手に入れるための鍵になります。

賢く、したたかに生き抜いてください。 君の未来が、搾取される側ではなく、面白い仕組みを創り出す側にあることを願っています。

コメントを残す