第7回:【成長性・割安性分析】売上と利益の「伸び」と、株価の「お得感」を測る:アステラス製薬

はじめに:その「高い買い物」、本当に価値がありますか?

こんにちは、投資の学びをナビゲートするmakoです。

あなたは、スーパーで1パック1,000円のイチゴを見かけたとき、どう思いますか? 「高いな」と感じるかもしれません。でも、それが世界で数粒しか獲れない伝説の品種で、明日には2,000円になることが分かっていたらどうでしょう? 途端に「1,000円は激安だ!」と、買い物かごに入れるはずです。

株式投資も、全く同じです。

「株価が上がっているから買う」のは、値段だけ見て買い物をする素人のやり方です。プロの投資家は、その企業の「将来の伸び(成長性)」を予測し、現在の株価がその価値に対して「割安なのか、割高なのか」を冷静に判断します。

多くの初心者が、将来性のない「ただ安いだけの株(バリュートラップ)」を買って資産を溶かしたり、逆に「期待だけで膨れ上がった割高すぎる株」を高値掴みして暴落に巻き込まれたりしています。こうした損失を回避し、利益を最大化するためには、数字という「物差し」で企業の価値を測る技術が不可欠です。

この記事を読み終える頃、あなたはアステラス製薬の「猛烈な復活の伸び」と、現在の株価に隠された「意外なお得度」を、プロの目で診断できるようになります。ワクワクするような「価値の発見」の旅へ、一緒に出かけましょう。


理論解説:成長と割安の「黄金律」を知る

企業の価値を測るには、2つの視点が必要です。1つは「どれだけ速く走っているか(成長性)」、もう1つは「その走りに対して、今のチケット代(株価)は適正か(割安性)」です。

1. 成長性分析:売上と利益の「クオリティ」

成長性を見る際、単に「増えたかどうか」だけでなく、その「質」が重要です。

  • 売上高成長率:市場で支持されているかを示す「生命線」。
  • 営業利益成長率:稼ぐ力が強まっているかを示す「筋肉量」。

伝説の投資家ピーター・リンチは、「利益の成長こそが株価を押し上げる唯一のエンジンである」と説きました。特に製薬業界のように、一つの新薬が爆発的に売れるビジネスでは、一時的な伸びではなく「持続的な成長シナリオ」が描けているかが、成功の鍵を握ります。

2. 割安性分析:PERとPBRという「魔法の眼鏡」

株価が適正かどうかを測るために、プロが必ず使うのがPERとPBRです。

  • PER(株価収益率):「その企業の利益の何年分まで、投資家が代金を払っているか」を示します。例:PER 15倍なら、利益15年分を前払いしているイメージです。
  • PBR(株価純資産倍率):「会社が解散したときに残る財産に対して、株価が何倍か」を示します。例:PBR 1倍を切るということは、家を建てる材料費よりも、家全体の売り値の方が安いという「異常な安売り」状態を意味します。

社会的証明として、ウォーレン・バフェットは「素晴らしい企業を適正な価格で買う」ことを信条としています。情報の希少性は、単にこれらの指標を計算することではなく、成長性と割安性を組み合わせて「成長しているのに、まだ正当に評価されていない宝物」を見抜く力にあります。


実践分析:アステラス製薬の「復活の速度」と「今の値札」

それでは、アステラス製薬株式会社の2026年3月期 第2四半期決算短信と、現在の市場コンセンサスを基に分析を進めます。

1. 成長性の検証(2026年3月期 中間期実績)

主要な成長指標を整理してみましょう。

指標成長率(前年同期比)分析の意味
売上収益成長率+10.1 %市場シェアが着実に拡大(合格点)
営業利益成長率+112.8 %収益構造が劇的に改善(驚異的)
コア営業利益成長率+32.4 %本業の実力値も力強く成長(非常に強い)

(数値出典:アステラス製薬株式会社 2026年3月期 第2四半期 決算短信)

この「利益が売上の10倍以上のスピードで伸びている」という状態は、まさに収益の「爆発期」に入ったことを示唆しています。第1回から第4回まで見てきた「新薬への世代交代」が、ついに数字として結実し始めたのです。

2. 割安性の診断(株価 1,700円前後と仮定して算出)

次に、この成長に対して株価がどう評価されているかを見ます。

指標数値計算の根拠
予想EPS(1株利益)100.50 円会社側通期予想
予想PER(収益性)約 16.9 倍株価 1,700円 ÷ 100.50円
実績BPS(1株純資産)約 895 円2Q末純資産 1.61兆円 ÷ 発行済株数
実績PBR(資産性)約 1.9 倍株価 1,700円 ÷ 895円

3. 数字の裏側にある「お得度」の判定

この数値をどう評価すべきでしょうか?

① PER 16.9倍: 成長株としては「バーゲン価格」?

日本のプライム市場の平均PERは約15倍前後です。アステラスの16.9倍は、平均よりわずかに高い程度。しかし、思い出してください。彼らは今、利益を32%以上(コアベース)のスピードで伸ばしています。

通常、利益が年30%成長する企業のPERは、20倍〜30倍になってもおかしくありません。成長スピードに対して、株価(PER)が追いついていない、つまり「成長がまだ十分に株価に織り込まれていない」可能性が高いのです。

② PBR 1.9倍: 「知財の塊」としての評価

PBR 1.9倍というのは、解散価値の約2倍の評価です。一見すると割高に思えるかもしれませんが、第2回で解説したように、アステラスの資産の多くは「未来の利益を生む無形資産(特許)」です。

これほど強力な新薬パイプライン(PADCEV等)を持ち、ROE 11%超を実現している企業において、PBR 1.9倍は「極めて妥当、あるいは控えめ」な評価といえます。


ストーリーテリング:眠れる巨人が「覚醒」し始めた瞬間

アステラス製薬の成長性と割安性を分析していると、あるドラマの一場面が浮かびます。

それは、長年リハビリを続けていたオリンピック選手が、練習試合で驚異的なタイムを叩き出したにもかかわらず、まだマスコミがそれに気づいていないような状態です。

これまでのアステラスは、特許切れという「病気」に苦しみ、株価も低迷していました。市場は「もう成長は止まった」と半分あきらめていたのです。しかし、今回の決算で彼らは、新薬という「最強の筋肉」を手に入れ、再び走り出したことを証明しました。

今のPER 16倍台という値札は、市場がまだ「本当にこのまま走り続けられるのか?」と半信半疑でいるからこその価格です。この疑念が確信に変わるとき、株価は成長にふさわしいステージへと駆け上がっていく……そんな「期待のギャップ」が今の彼らにはあります。


まとめ:あなたの「資産の種」を見極める

今回は、成長性と割安性という2つの指標を通じて、アステラス製薬の「本当の価値」を解剖しました。

今回のポイントを3つにまとめます。

  1. 本業の利益成長(コア営業利益+32.4%)は、文句なしの成長フェーズにある。
  2. PERは約17倍。現在の高い成長スピードを考慮すると、むしろ「割安」の部類に入る。
  3. 市場が復活を完全に信じ切る前の「今」こそ、最も分析価値が高いタイミングである。

【今すぐできるベビーステップ】

あなたが保有している株、あるいは気になる銘柄の「予想PER」と「来期の利益予想の伸び率」を比較してみましょう。もし「利益が20%増えるのに、PERが10倍」といった銘柄があれば、それは市場が見落としている「お宝」かもしれませんよ。

さて、次回は第8回:【定性分析①】ビジネスモデルと競合比較をお届けします。

数字の分析はここまで。次回からは、「なぜアステラスは強いのか?」「ライバルの武田薬品や第一三共と何が違うのか?」という、数字に表れない「企業の魂」を解き明かします。投資判断を盤石にするための、熱い比較論をどうぞお楽しみに!


makoの投資判断評価:アステラス製薬(4503)

総合評価: 9 / 10

理由:

成長性と割安性のバランスが、今、非常に魅力的な水準にあります。これほどの利益成長を見せながら、株価指標に過熱感がないのは、長期投資家にとって絶好の仕込み場となり得ます。特許切れリスクを新製品の成長で完全に飲み込もうとしている今の勢いは、数字以上に力強いと判断し、最高に近い評価を付けました。

(出典:アステラス製薬株式会社 2026年3月期 第2四半期 決算短信、および最新市場データ)


免責事項:

本記事は、公開された情報に基づく財務分析の解説であり、特定の株式の購入を推奨するものではありません。PERやPBR、利益成長率は、株価の変動や今後の業績修正により刻々と変化します。また、医薬品開発には特有の不確実性が伴います。投資に関する最終的な決定は、必ずご自身の責任と判断において行ってください。

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