「ほしい」の正体を探れ。親子で一生モノの金銭感覚を養う「ニーズとウォンツ」の教え方

「ねえ、これ買って!」 買い物に行くたびに繰り返される、お子さんからのリクエスト。多くの親御さんが一度は頭を抱えたことのある光景ではないでしょうか。「うちはお金持ちじゃないのよ」と諭したり、「テストで頑張ったらね」と条件を出したり。その場をしのぐ方法はいくつかありますが、実はこの瞬間こそが、子供の将来を左右する**「マネーリテラシー」**を育む絶好のチャンスなのです。

私たちが生きる現代社会は、常に「ほしい」という欲望を刺激する広告や情報に溢れています。大人でさえ、SNSの広告を見て「これがあれば生活が変わるかも」と衝動的にポチってしまうことがあるはずです。ましてや、感情をコントロールする力が未発達な子供にとって、目の前の魅力的なおもちゃやゲームは「絶対に必要なもの」に見えてしまいます。

今回は、子供たちに「お金の価値」だけでなく、「自分の欲望を客観的に見つめる力」を授ける方法についてお話しします。キーワードは、「ニーズ(Needs)」と「ウォンツ(Wants)」の切り分けです。


1. 「ほしい」の正体は何か?親子で整理したい2つの言葉

まず、私たち大人が改めて定義しておきたいのが、「ニーズ」と「ウォンツ」という2つの概念です。経済学やマーケティングの分野では基本の言葉ですが、これを家庭内の共通言語にすることで、お金の使い方は劇的に変わります。

生きていくために不可欠な「ニーズ(Needs)」

「ニーズ」とは、生きていくために、あるいは健全な生活を送るために「なくてはならないもの」を指します。 例えば、毎日の食事、喉を潤す水、体を守る服、雨風をしのぐ家、そして学校に行くための学用品。これらは、もし欠けてしまったら生活が立ち行かなくなるものです。

子供に説明する時は、「これがなかったら、明日困るかな?」と問いかけてみてください。「水がなかったら喉が渇いて動けなくなるね」「靴がなかったら外を歩くときに足が痛いね」といった具合に、生存や社会生活に直結しているものがニーズです。

心を彩る、でもなくても困らない「ウォンツ(Wants)」

対して「ウォンツ」とは、「あったらいいな」「もっとこうしたい」という、プラスアルファの欲望です。 最新のゲームソフト、可愛いキャラクターの文房具、放課後に食べるお菓子。これらは、なくても死ぬことはありませんし、明日学校に行けなくなるわけでもありません。

しかし、ここで大切なのは**「ウォンツを否定しないこと」**です。ウォンツは、私たちの人生に彩りを与え、幸福感を高めてくれる大切な要素でもあります。問題は、ウォンツを「ニーズ」だと思い込んで、手当たり次第に手に入れようとすることにあります。

「これはニーズ?それともウォンツ?」 この問いかけが家庭内で定着するだけで、お子さんの脳内では「感情による判断」から「論理による判断」への切り替えが始まります。


2. 【親子ワーク】無人島に何を持っていく?「仕分けの力」を養う方法

言葉の説明だけでは、子供の心にはなかなか響きません。そこで、私の知人たちにも好評だった「無人島持参リスト」というワークをおすすめします。これは遊び感覚でマネーリテラシーの核を学べる、非常に強力なトレーニングです。

サバイバルという極限状態で、価値の優先順位を知る

設定はシンプルです。「明日から家族で、何もない無人島に1ヶ月暮らすことになりました。持っていけるものは、家族全員で10個だけです」と伝えます。

ノートを広げ、まずは思いつくままに「持っていきたいもの」を書き出させます。

  • Switch(ゲーム機)
  • お菓子
  • ぬいぐるみ
  • ライター
  • テント
  • お気に入りの漫画
  • 懐中電灯
  • 毛布
  • 予備の電池

リストが出揃ったら、ここからが本番です。「10個に絞る」という作業を行います。 ここで興味深いのは、子供たちが「Switchは持っていきたいけど、電池が切れたらただの板になる」「お菓子を食べきったらお腹が空くから、釣竿の方がいいかも」と、自発的に**「優先順位」**を考え始めることです。

感情と必要性を切り分ける「脳のトレーニング」

このワークのゴールは、正解を出すことではありません。「自分にとって、本当に大切なものは何か」を、感情(ウォンツ)と必要性(ニーズ)の間で揺れ動きながら決断するプロセスそのものに価値があります。

最後に、残った10個のアイテムを「ニーズ」と「ウォンツ」に分類させます。 「水やテントは生きるために必要(ニーズ)」 「ぬいぐるみは夜寂しくないために必要(ウォンツだけど、心のニーズに近い)」 このように分類を進めることで、普段の買い物でも「これは無人島に持っていくレベルで必要なものかな?」と一歩立ち止まって考える習慣が身につきます。


3. お小遣い帳はもう古い?「価値」を基準にした新しいお金の教え方

ワークで感覚を掴んだら、次はお小遣いという「実戦」に移りましょう。単に「何にいくら使ったか」を記録する従来のお小遣い帳ではなく、ニーズとウォンツを意識した管理法を提案します。

お小遣いを「ニーズ枠」と「ウォンツ枠」に分ける

例えば、月々のお小遣いが1,000円だとします。この1,000円を全て「自由に使っていいお金」にするのではなく、親子で「役割」を決めます。

  • ニーズ枠(500円): 学校で必要なノートや鉛筆がなくなった時に買うためのお金。
  • ウォンツ枠(500円): 自分の好きなカードやガチャガチャに使うお金。

もし、ウォンツ枠を使い切ってしまっても、ニーズ枠には手をつけない。こうしたルールを作ることで、「予算を守る」という管理能力が養われます。また、ニーズ枠のお金が余ったら、それは「将来の大きなウォンツ(高価なゲーム機など)」のために貯金する、という流れを作るのも良いでしょう。

失敗から学ぶ「あの時、本当に必要だった?」という振り返り

子供がウォンツに全額注ぎ込み、後で本当に欲しいものが買えずに泣くこともあるかもしれません。そんな時、親は「だから言ったじゃない」と責めるのではなく、「いい勉強になったね」と一緒に振り返ってあげてください。

「あの時買ったお菓子は、今の悔しさよりも価値があったかな?」 この振り返りが、自分にとっての**「満足度の高いお金の使い方」**を知るきっかけになります。大人になってから大きな借金や浪費で失敗する前に、小さなお小遣いの範囲でたくさん失敗させてあげることこそ、親ができる最高の教育かもしれません。


4. 親の背中が最大の教材。あなたの家計は「ウォンツ」に支配されていないか?

子供に「ニーズとウォンツを分けなさい」と言いつつ、親自身が毎日コンビニでなんとなく新商品を買っていたり、セールだからと不要な服を買い込んでいたりしては、説得力がありません。子供は親の言葉よりも、親の「行動」を驚くほどよく見ています。

子供は親の「お金の使い方」を驚くほど見ている

買い物中、あなたが何を基準に選んでいるか、独り言でもいいので子供に聞かせてあげてください。 「この洗剤は毎日使うからニーズだね。でも、こっちの少し高い柔軟剤は香りが好きだからウォンツかな。今日は頑張ったから、ウォンツを買っちゃおうかな」 このように、自分の判断基準を言語化することで、子供は「大人はこうやってお金をコントロールしているんだ」と学びます。

教育資金という最大の「ニーズ」にどう備えるか

そして、親世代にとっての最大の「ニーズ」といえば、やはりお子さんの教育資金や、自分たちの老後資金です。これらは「いつか必要になる」ことが分かっている、究極のニーズです。

しかし、日々の生活の中では、目の前の小さなウォンツ(外食、趣味、流行の家電)に予算が奪われ、肝心のニーズへの備えが後回しになりがちです。家計の管理も、実は「ニーズとウォンツの仕分け」そのものなのです。

もし、今の家計が「ウォンツ」に圧迫されていて、将来の「ニーズ」への備えが不安だと感じるなら、それは自分たちだけで悩むのではなく、一度プロの視点を入れるタイミングかもしれません。

資産運用の考え方については、以前こちらの記事でも詳しく触れましたが、NISAやiDeCoを活用した資産形成の基本を知っておくことは、現代の親にとって必須のスキルと言えます。


5. 【実践編】賢い親がやっている「未来の自分」への投資

お金の教育の最終ステップは、「お金を増やす(運用する)」という概念を伝えることです。今の1,000円を今日使ってしまうか、それとも10年後のために取っておくか。

今の1,000円が、10年後のいくらになるか?(複利の話)

子供に「複利」の話をするのは難しいかもしれませんが、「お金がお金を連れてくるんだよ」と種まきの例えで話すと理解が深まります。 「今日、1,000円でウォンツを買うのもいいけれど、これを『未来の自分』のために貯めておくと、1,100円、1,200円と増えて、もっと大きな願い(ウォンツ)を叶えてくれるかもしれないね」

これは投資の基本ですが、親が実際に新NISAなどで運用している姿(あるいはその仕組み)を見せることは、子供にとって「お金は消費するだけのものではない」という新しいパラダイムを提供することになります。

教育資金を確実に守り、増やすためのプロの視点

とはいえ、日々の仕事や育児に追われる中で、全ての家計を完璧に管理し、投資戦略を立てるのは容易ではありません。特に「ニーズ(教育費)」を確保しながら「ウォンツ(家族の娯楽)」も諦めないバランスを見極めるのは、専門的な知識が必要です。

「教育資金は学資保険でいいのか?」 「新NISAをどう活用すれば効率的なのか?」 「今の家計のままで、子供が大学に行く時にいくら足りないのか?」

こうした具体的な悩みは、一度FP(ファイナンシャルプランナー)のような専門家に相談し、可視化することをおすすめします。親の心の余裕は、子供への教育の質に直結しますから。


まとめ:お金の教育は、最高のプレゼント

子供にマネーリテラシーを教えることは、単に「ケチになること」を教えるのではありません。 **「限られた資源(お金と時間)を使って、いかに自分と大切な人を幸せにするか」**という、人生の選択術を教えることなのです。

「ニーズ」をしっかり守り、「ウォンツ」で人生を豊かにする。 このシンプルな原則を親子で共有できれば、お子さんは将来、どんな経済状況になっても自分の足で立ち、賢く生きていくことができるでしょう。

親ができる最高のプレゼントは、高価なプレゼントそのものではなく、それを手に入れるための「知恵」と、将来を守るための「確かな家計基盤」です。

まずは、今晩の食卓で「もし無人島に行くなら、何を持っていく?」という会話から始めてみませんか。そして、その会話のついでに、ご自身の家計という「無人島への備え」が万全かどうかも、少しだけ振り返ってみてくださいね。

もし、将来の教育資金や資産形成に漠然とした不安があるのなら、そのままにせず、プロの力を借りて「安心」に変えておくのが、40代の賢い選択と言えるでしょう。

教育資金や老後資金など、将来の「ニーズ」に向けた具体的な家計のシミュレーションは、無料で専門家に相談できるサービスが非常に役立ちます。

特にお子さんのいるご家庭に特化したマネーセミナーやFP相談は、今の自分たちの立ち位置を客観的に把握する絶好の機会です。無理な勧誘もなく、オンラインで気軽に受けられるものも多いので、一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

マネマッチ

2. 免責事項

  • 本記事は情報提供を目的としており、特定の投資手法や金融商品を勧誘するものではありません。
  • 投資には元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身の責任で行ってください。
  • 掲載しているワークや教育法は一例であり、効果には個人差があります。

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