小学生の頃は、お小遣いの使いすぎで泣く姿も可愛げがありました。「数百円の失敗」で済んでいたからです。 しかし、中学生、高校生となると話は変わります。
スマートフォンの所持率はほぼ100%になり、SNSを通じて世界中の「欲望」や「罠」とダイレクトに繋がる時代。さらに、2022年4月の民法改正により、**18歳で「成人」**として扱われるようになりました。
これは、高校3年生(あるいは卒業直後)になれば、親の同意なしにクレジットカードを作り、高額なローン契約を結び、投資を始められることを意味します。同時に、未成年者取消権(親が後から契約を取り消せる権利)という最強の盾を失うことでもあります。
「うちの子はまだ子供だから」 そう思っているのは親だけかもしれません。
今回は、思春期を迎えた中高生を持つ40代の親御さんに向けて、現代社会を生き抜くために必須となる**「高度な金融リテラシー(稼ぐ・守る・増やす)」**の教え方を、4つの重要テーマに分けて徹底解説します。
1. 「見えないお金」の闇と戦う:スマホ時代の防衛術
小学生編ではキャッシュレスの「管理」をテーマにしましたが、中高生編では**「デジタルリスクへの防衛」**が主戦場になります。
SNSに潜む「簡単にお金が稼げる」という猛毒
InstagramやTikTok、X(旧Twitter)を見れば、「スマホ一台で月収100万」「誰でも勝てる投資法」といった広告が溢れかえっています。 金融リテラシーのない若者は、これらを「チャンス」と誤認してしまいます。
ここで親が教えるべきは、**「リスクとリターンの相場観」**です。 「世の中に『ローリスク・ハイリターン』の話は絶対に存在しない。もしあるなら、誰もSNSで他人に教えたりしない。他人に教えるのは、教えること自体でカモから搾取しようとしている時だけだ」 この冷徹な事実を、何度も何度も刷り込む必要があります。
特に最近社会問題化している**「闇バイト」**への警戒は急務です。「荷物を受け取るだけ」「ホワイト案件」といった甘い言葉で募集され、気づけば犯罪の実行犯にさせられるケースが後を絶ちません。「楽して稼げる話には、必ず裏(犯罪)がある」ということを、ニュース映像などを見せながら具体的に警告し続ける必要があります。
「投げ銭」と「後払い」の罠
中高生の間でトラブルになりやすいのが、ライブ配信アプリでの「投げ銭」と、ZOZOTOWNなどの「ツケ払い(BNPL)」です。 これらは、「今お金がなくても欲求を満たせる」仕組みです。しかし、それは未来の自分からの借金に他なりません。
「来月のお小遣いで払えばいいや」という安易な思考が、将来の多重債務への入り口になります。 「手元に現金がないなら、買う資格はない」。この鉄則を、今のうちに徹底させておく必要があります。
2. 「労働」のリアルを学ぶ:アルバイトと税金の基礎
高校生になれば、アルバイトを始めるお子さんもいるでしょう。これは、社会の仕組みを学ぶ絶好のチャンスです。
「103万円の壁」と社会保険
「たくさんシフトに入ったのに、親に怒られた」。そんな経験はありませんか? アルバイトを始める前に、必ず**「扶養」と「税金」**の話をしましょう。
- 103万円の壁: これを超えると親の税金(扶養控除)が増え、世帯全体の手取りが減る可能性があること。
- 130万円の壁: 社会保険への加入が必要になり、手取りがガクンと減る可能性があること。
これらを教えることは、単なる節税テクニックではありません。「日本という国は、稼げば稼ぐほど税金や社会保険料がかかる仕組みになっている」という**「額面と手取りの違い」**を体感させるためです。給与明細をもらったら、必ず親子で一緒に見直し、「何が引かれているのか」を確認する習慣をつけましょう。
ブラックバイトから身を守る「労働法」
残念ながら、学生を使い捨てにする「ブラックバイト」も存在します。 「テスト期間なのに休ませてもらえない」「着替えの時間は給料が出ない」「ノルマ未達で商品を買い取らされた」 これらはすべて法律違反です。
「労働基準法というルールがあって、働く人は守られているんだよ。もし理不尽なことがあったら、すぐに相談しなさい。辞める権利は君にあるんだから」 そう伝えておくことで、子供は「NO」と言う勇気を持てます。お金を稼ぐことの厳しさと同時に、**「自分の権利を守る知識」**を授けるのも親の務めです。
3. 「信用(クレジット)」という目に見えない財産
18歳になると解禁されるクレジットカード。ここで最も恐ろしいのは、使いすぎることよりも、「信用情報(クレジットヒストリー)」に傷がつくことです。
スマホ代の滞納が「将来の家」を奪う
多くの中高生が知らない事実があります。それは、スマホの本体代金を分割払いにしている場合、**「携帯料金の滞納=借金の返済遅延」**として信用情報機関(CICなど)に記録されるということです。
「たかが数千円、遅れても払えばいいでしょ」 その軽い気持ちが、5年後、10年後に牙を剥きます。 就職してクレジットカードを作ろうとしたら審査に落ちる。結婚して家を買おうとしたら住宅ローンが組めない。そんな悲劇が実際に起きています。
「信用」とは、「約束を守る履歴」の積み重ねです。一度失うと、取り戻すのに何年もかかる。この重みを、クレジットカードを持たせる前に(あるいはスマホを持たせる時点で)コンコンと説く必要があります。
「リボ払い」という悪魔
クレジットカード会社は、キャンペーンで「リボ払い」を推奨してきます。「毎月の支払いが一定で安心!」という甘い言葉と共に。 しかし、これは**「終わりなき借金地獄」**への招待状です。年利15%〜18%という金利がいかに暴力的か。
数学の勉強が役立つのはここです。 「50万円買い物して、毎月1万円ずつリボ払いで返済したら、払い終わるのに何年かかって、手数料だけでいくら取られると思う?」 実際にシミュレーションサイトで計算させてみてください。その数字を見れば、リボ払いを使おうなんて気は起きなくなるはずです。
4. 「増やす」経験:NISAと複利の力を味方につける
2022年から高校の家庭科で「資産形成」の授業が始まりました。もはや投資は「ギャンブル」ではなく「教養」です。
時間こそが若者の最大の武器
中高生に投資を教える際、チャートの読み方や銘柄選びは不要です。教えるべきは**「複利(Compound Interest)」**の魔法です。
アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだ複利。 「もし君が今から毎月5,000円を積み立てて、年利5%で運用できたら、60歳になった時にいくらになっていると思う?」 これもシミュレーションを見せましょう。元本250万円程度に対し、受取額が1,000万円近くになる(期間40年以上の場合)グラフを見れば、**「時間を味方につけること」**の凄まじさが視覚的に理解できます。
18歳になったら新NISA口座を開設させる
お年玉やアルバイト代の一部を使って、18歳になったら少額(月1,000円でもOK)から「つみたて投資枠」で全世界株式(オルカン)やS&P500などのインデックスファンドを買ってみる。 これは、値動きに一喜一憂するためではありません。「自分が寝ている間も、世界中の企業が働き、価値を生み出している」という資本主義のオーナーサイドの視点を持つためです。
この視点を持つと、ニュースの見方が変わります。円安、戦争、AIの進化。それらが「自分の資産」にどう影響するかを考えるようになる。これこそが生きた経済教育です。
5. 親子関係のアップデート:「管理者」から「コンサルタント」へ
中高生に対し、頭ごなしに「あれはダメ、これはダメ」と命令するのは逆効果です。反発を招き、親に隠れて危険な行動に走るだけです。
親の役割は、管理・監督者から、**「人生の先輩としてのコンサルタント(相談役)」**へとシフトすべきです。
「お父さんは昔、株で失敗してね。その時こう思ったんだ…」 「今、家のローンはこれくらい残っていて、金利が上がるとこうなるんだよ」
親の失敗談や、家計のリアルな悩みを「一人の大人」として共有してください。 子供は「自分は信頼されている」と感じ、親の言葉に耳を傾けるようになります。 何かトラブルに巻き込まれた時、「怒られるから隠そう」ではなく「まず親(コンサルタント)に相談して知恵を借りよう」と思える関係性を築くこと。 これこそが、最終的なセーフティネットになります。
結論:自立とは「自由と責任」のセット販売である
高校を卒業すれば、彼らは荒波の中へ漕ぎ出していきます。 その時、カバンに詰めてあげられるのは、お金そのものではなく、**「お金をコントロールする知恵」**です。
- 簡単に儲かる話はないという「健全な懐疑心」
- 自分の権利を守るための「法律の知識」
- 見えないお金を操る「信用の重み」
- 時間を味方につける「投資の感覚」
これらを中高生の間にどれだけ伝えられるか。 時には失敗させ、時には真剣に議論し、親子でマネーリテラシーを高めていく。 それが、親から子へ贈れる、最高の「成人祝い」になるはずです。
まずは今週末、お子さんのスマホの「月々の支払い」がどうなっているか、一緒に確認することから始めてみませんか?