【第7回】成長率+83.6%の衝撃。株価4,253円が「お宝」に変わるカウントダウンと、ライバル比較の真実【企業分析マスター講座】

こんにちは、makoです。

投資をしていて、最も勇気が必要な瞬間。それは「高値圏にある株を買うとき」ではないでしょうか。

現在、富士通の株価は4,253円(2025年12月24日時点)。

チャートを眺めて、「あぁ、もっと安い時に買っておけばよかった」「今から買うのは、高値掴み(ジャンピングキャッチ)になるんじゃないか?」……そんな不安で指が止まってしまう。その気持ち、痛いほどよく分かります。

しかし、もしその株価が、1年後には「安すぎた」と後悔するようなバーゲンセール価格だとしたらどうでしょうか?

投資における最大の損失は、株価が下がることではありません。**「成長する企業の未来を、今の数字だけで判断して見逃してしまうこと」**です。

今回は、富士通が叩き出した驚異の**成長率+83.6%**という数字を使い、4,253円という株価の「化けの皮」を剥いでいきます。さらに、これまで分析してきた「異常なROE」や「実質配当性向」のデータもすべて統合し、富士通の真の価値を暴きます。

この記事を読み終える頃、あなたは「4,253円」という数字を恐れるのではなく、その裏にある「成長の加速度」を自分の計算で納得し、自信を持って相場と向き合えるようになっているはずです。


1. 理論解説:成長株投資の聖書「PEGレシオ」とPERの未来

まず、私たちが戦うための「武器(理論)」を整理しましょう。

プロの投資家は、今のPER(株価収益率)が30倍であっても「安い」と判断することがあります。なぜそんな魔法のようなことが起きるのか。それは、「成長率」が「PER」を追い越すことを知っているからです。

① PER 15倍は「ガソリン車の適正価格」

一般的に、日本株の平均PERは14〜16倍と言われます。

  • PER 15倍:今の利益が15年続けば元が取れる状態。これは、成長が止まった、あるいは緩やかな「成熟企業」の物差しです。これを富士通のような「変革期にある巨大IT企業」にそのまま当てはめるのは、新幹線をママチャリの速度計で測るようなものです。

② 伝説の投資家ピーター・リンチの教え:PEGレシオ

ピーター・リンチは、**「成長率 > PER」**である限り、その株は割安であると説きました。

  • PEGレシオ = PER ÷ 成長率この数値が「1.0」を下回っていれば、その株は成長に対して激安であると判断されます。

③ PBR 1倍割れ是正と「期待値」の正体

東京証券取引所が「PBR 1倍割れ」の是正を求めてから、日本企業は「解散価値」よりも「稼ぐ効率(ROE)」を重視するようになりました。PBRが1倍を超えている分は、その企業の**「未来への期待料」**です。富士通のPBRがライバルより高いのは、それだけ「未来が変わる」と信じている投資家が多い証拠なのです。


2. 実践分析:富士通「+83.6%」成長の魔法を計算する

それでは、ご提供いただいた決算短信の数字を使い、現実のシミュレーションを行いましょう。ここからは、感情を排した「算数」の時間です。

【現在のステータス確認】

  • 株価:4,253円
  • 今期調整後EPS予想(本業の実力):142.55円
  • 現在の実力PER約 29.8倍
  • 本業の利益成長率+83.6%(調整後営業利益ベース)

この成長率で利益が増え続けた場合、今の株価(4,253円)に対して、PERはどのように下がっていくでしょうか?

【シミュレーション1:PER 15倍に到達するのはいつか?】

株価が4,253円で固定されていると仮定して、利益(EPS)が成長率+83.6%で伸びた場合:

  1. 現在:EPS 142.55円 → PER 29.8倍
  2. 1年後:EPS 261.72円 → PER 16.2倍
  3. 1.13年後(到達点):EPS 283.53円 → PER 15.0倍

なんと、わずか1年と1ヶ月強です。

今、「PER 30倍は高すぎる」と躊躇している間に、利益が爆発的に伸びることで、たった1年後には「市場平均並みの安心水準」まで割安化が進んでしまうのです。

【シミュレーション2:3年後にPER 15倍を目指すなら?】

「いや、83.6%なんて成長は長くは続かないよ」と考える慎重なあなたのために、別の計算もしました。

  • 条件:3年後に今の株価(4,253円)がPER 15倍(=EPS 283.5円)になること。
  • 必要な年平均成長率(CAGR)約 25.8%

つまり、富士通が今後3年間、毎年約26%ずつ利益を増やし続ければ、3年後には今の株価は文句なしの「適正価格」になります。

現在の成長率が83.6%であることを考えれば、この「年26%」という目標は、決して夢物語ではなく、かなり現実味のある(あるいは控えめな)シナリオに見えてきませんか?


3. 実践分析:ライバル比較。高いなら買わないほうがいい?

ここで、あなたのご質問「同業他社に比べて高いなら買わないほうがいい?」にズバリお答えします。

結論から言うと、**「変化率(伸びしろ)を狙うなら、一番高い富士通が一番の狙い目」**になります。

【IT・電機3社のガチンコ比較】

項目富士通 (6702)日立製作所 (6501)NEC (6701)
株価4,253円約 4,000円〜約 3,500円〜
予想PER(調整後)約 29.8倍約 25.2倍約 18.1倍
利益成長率+83.6%+20〜30%前後+10〜15%前後
自己資本比率60.7% (鉄壁)約 30〜40%約 30〜40%

なぜ富士通だけが「高い」のか?

一見すると、NEC(PER 18倍)が最もお買い得に見えます。しかし、投資家の心理はこうです。

  • NEC:安定しているが、劇的な変化(利益の爆増)は想定しにくい。
  • 日立:既に変革を終え、世界王者として君臨。期待は既に織り込み済み。
  • 富士通今まさに変革の真っ最中であり、利益率が4%から7.7%へ、そして10%超えへと「化ける」プロセスにある。

投資のリターンは「今、優れていること」ではなく**「これから良くなること」から生まれます。富士通がライバルより高いPERで買われているのは、「日立が数年前に見せた数倍株への化け方」を、今の富士通が再現する**と確信している投資家が世界中にいるからです。


4. 過去の回答を統合:富士通の価値を支える「3つの真実」

これまでの連載で明らかになった事実をここで統合しましょう。今の株価4,253円の土台は、以下の3つの「盤石な事実」で構成されています。

① ROE 26%の正体と本質的なIQ

第4回で「ROE 26%は資産売却のドーピングだ」と指摘しました。しかし、ドーピングを除いた本業の営業利益率が4.2%から7.7%へ倍増しているという事実は揺るぎません。

「賢く稼ぐ体質」への変化が、今の高成長(+83.6%)のエンジンです。

② 「ケチ」ではない実質配当性向 30%

第6回で「表面上の配当性向は低い(約5%)」と見ましたが、これも一時的な利益が分母を大きくしていただけ。本業の利益に対しては30.3%を還元しており、増配と200億円の自社株買いを組み合わせる姿勢は、日立やNECに引けを取らない誠実なものです。

③ 6,400億円の「最強の武器」

第3回で驚いた「現金倍増」。手元に6,476億円ものキャッシュがあることは、単なる安全性(流動比率 186%)だけでなく、**「いつでも成長を加速させるM&Aができる」**という強力なオプション価値を意味します。

この現金の存在が、PER 30倍という強気な株価を支える「保険」になっています。


5. 結論:あなたが明日から見るべきポイント

今回の「成長性と割安性」の徹底分析を通して、富士通の価値を以下のように定義します。

  1. 株価4,253円は「将来の成功を先取り」している値段。決して安くはありませんが、成長率+83.6%という「加速度」を考えれば、1年後には適正価格まで利益が追いつく計算です。
  2. ライバル他社より高いのは「期待値の差」。安定ならNEC、完成度なら日立、そして**「変革による株価の跳ね上がり(リレーティング)」を狙うなら富士通**という棲み分けができます。
  3. リスクは「成長の鈍化」。もし成長率が26%を大きく下回るようなことがあれば、PER 30倍という評価は剥落し、株価は調整局面に入るでしょう。

あなたへのアクションプラン(ベビーステップ)

この記事を読み終えたら、以下のことを1つだけ実行してください。

  • 証券アプリやYahoo!ファイナンスの「比較」機能を使って、富士通(6702)と日立(6501)の「過去1年のチャート」を重ねて見てみる。

これだけでOKです。富士通が日立を追い越そうとする熱量を感じ取ることができれば、あなたはもう単なる「数字の消費者」ではなく、企業のドラマを読み解く「投資家」です。

次回予告:【定性分析①】ビジネスモデルと競合比較

「数字」の魔法はすべて解明しました。では、なぜ富士通はこれほどまでの高成長(+83.6%)を実現できるのでしょうか?

次回は、その「稼ぎの構造」であるビジネスモデルに深く切り込みます。

稼ぎ頭「Uvance」の正体と、ライバルたちとの決定的な「戦略の差」を解剖します。お楽しみに!


makoの投資判断:8/10点

【評価理由】

現在の株価4,253円は、実力PER 30倍という強気な評価ですが、成長率+83.6%という圧倒的なスピードがあれば、約1年強で適正水準まで利益が追いつくという計算結果を重視しました。資産売却で得た6,400億円という潤沢なキャッシュが、さらなる成長投資や還元への期待感を支えています。「割安株」ではありませんが、「超・優良な成長株」として8点を維持します。


免責事項

本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を勧誘するものではありません。数値や分析は、富士通株式会社の2026年3月期第2四半期決算短信(2025年10月30日発表)に基づいたAIによる解釈であり、将来の成長や株価の推移を保証するものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。

(出典:富士通株式会社 2026年3月期 第2四半期決算短信)

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