こんにちは、makoです。
投資をしていて、こんな風に思ったことはありませんか?
「この会社、すごく儲かっているはずなのに、なんで配当金がこれっぽっちなの?」
あるいは、「配当利回りが高いから買ったのに、急に減配されて株価もガタ落ち……」
そんな経験をすると、投資が怖くなってしまいますよね。でも安心してください。それはあなたが悪いのではなく、企業の「還元の仕組み」を読み解く物差しを、まだ持っていなかっただけなのです。
企業が稼いだ利益を、どのように私たち株主に返してくれるのか。これを知ることは、投資家にとっての「収穫祭」のルールを知ることと同じです。ルールさえ分かれば、あなたは寝ている間も着実に資産を運んでくれる「金のなる木」を見分けられるようになります。
第6回は、富士通の**【株主還元分析】**。
一見「ケチ」に見えてしまう数字の裏側に隠された、驚くほど誠実な戦略を、プロの視点で徹底解説します。この記事を読み終える頃には、あなたは表面的な利回りに惑わされない「本質を見抜く投資家」への階段を一つ登っているはずです。
1. 理論解説:配当性向は「収穫した種」をどう分けるか
まず、企業が株主にお金を返す際の最も重要な指標、**配当性向(はいとうせいこう)**についてお話しします。
社会的証明として、投資の神様ウォーレン・バフェットは「企業が自ら稼いだ資金を、株主にとって最も利益になる方法で再配分しているか」を極めて重視します。その代表的な指標が配当性向です。
配当性向の「理想」と「現実」
配当性向とは、企業が1年間で稼いだ利益のうち、何%を配当金として配ったかを示す指標です。
- 配当性向 100%:収穫した種を全部食べてしまう農家です。お腹はいっぱいになりますが、来年植える種がなくなり、いつか飢えてしまいます。
- 配当性向 30~40%:日本の上場企業で「株主を大切にしている」と言われる合格ラインです。しっかり分け前を与えつつ、来年のための肥料や機械(設備投資)にお金を残す、賢い農家です。
多くの投資家は「配当性向が高いほど良い」と思いがちですが、実は**「何に対しての%なのか」**を見極めることこそが、希少価値の高い情報になります。
2. 実践分析:富士通の「配当性向4.7%」に隠されたトリック
それでは、富士通の最新の決算短信(1ページ目)を一緒に見ていきましょう。ここには、初心者が見ると「えっ?」と驚くような、不思議な数字が並んでいます。
今回の富士通の中間利益(2,620億円)と配当金(中間15円、年間予想30円)から計算すると、表面上の配当性向は、わずか**「約10%(通期予想ベースでは約4.7%)」**しかありません。
「利益の5%も返してくれないの? 大手なのにケチすぎる!」
そう憤る株主がいてもおかしくない数字です。しかし、私の分析フィルターを通すと、全く別の景色が見えてきます。
本業の実力で測る「本当の配当性向」
第4回で分析した通り、今回の富士通の利益には、資産売却という「臨時ボーナス」が大量に含まれています。これを除いた、本業の稼ぎ(調整後利益)で計算し直してみましょう。
【富士通:表面上の還元 vs 実力ベースの還元】
| 項目 | 表面上の数字(一時利益込み) | 実力ベース(調整後) |
| 1株あたり利益(EPS) | 147.47円 | 49.47円 |
| 中間配当金 | 15.00円 | 15.00円 |
| 本当の配当性向 | 10.2% | 30.3% |
(出典:富士通株式会社 2026年3月期 第2四半期決算短信)
いかがでしょうか?
一時的なボーナスを除けば、富士通は**「本業の儲けの約3割」をきっちり株主に返している**ことが分かります。
彼らの戦略は、「一度きりのボーナスを配当で配ってしまい、来年減配して株主をガッカリさせるくらいなら、それは将来の投資(M&A)に回し、月給(本業)からは安定して3割を配り続ける」という、極めて誠実なものなのです。
3. 他社比較:ライバルと比べて「還元力」はどう?
では、他のIT大手と比較してみましょう。富士通の立ち位置がより明確になります。
| 企業名 | 配当方針 | 株主還元の特徴 |
| 富士通 | 調整後利益の30% | 安定感重視。巨額キャッシュはM&A用に温存。 |
| NEC | 30%程度 | 標準的。利益に見合った着実な配当。 |
| 日立製作所 | 総還元性向50% | 積極的。配当+自社株買いで半分を返す。 |
富士通は、かつての日立製作所のように「資産を整理し、現金を溜め込んでいる」フェーズにあります。還元率は日立に一歩譲りますが、その分、「次の一手(爆発的な成長投資)」への期待値が最も高い状態と言えます。
株主から不満は出ていないのか?
これだけ現金があるのに「もっと配当を!」という声がないわけではありません。
しかし、現状では不満は抑えられています。その理由は、**「自社株買い」と「10分割」**という飴(アメ)を与えているからです。
富士通はこの半年で205億円もの自社株買いを実行しました。さらに、株を10分の1に分割して「個人投資家でも買いやすく、かつ株価が上がりやすい環境」を整えました。株主は「今すぐの現金(配当)」よりも、「将来の株価上昇」を信じて待っている状態なのです。
今のうちに、こうした「隠れた配当性向」をグラフでパッと確認できる証券口座を準備しておくことをお勧めします。分析の精度が劇的に変わります。
4. まとめ:富士通の還元は「信頼」で成り立っている
- 表面上の配当性向4.7%は一時的な「歪み」。本業ベースでは30.3%と極めて健全。
- 他社に比べ「今すぐの配当」は控えめだが、自社株買いや将来への投資余力は圧倒的。
- 富士通は「安定」を求める長期投資家にとって、非常に誠実な還元姿勢を持っている。
あなたへのアクションプラン(ベビーステップ)
この記事を読み終えたら、以下のことを1つだけ実行してください。
- 自分が持っている株の「配当利回り」ではなく、「配当性向」をチェックする。
もし100%を超えていたら、それは「貯金を切り崩して配当を出している」危険な状態かもしれません。富士通のように「30%程度」に収まっているかを確認してみてください。
次回予告:【成長性・割安性分析】株価の「お得感」を測る
「財務は完璧、還元も誠実。じゃあ、今の株価で買っていいの?」
次回は、いよいよ株価そのものに迫ります。
富士通の株は、今「お買い得(割安)」なのか、それとも「高嶺の花(割高)」なのか。
PERやPBRという物差しを使って、その正体を暴きます。お楽しみに!
makoの投資判断:9/10点
【評価理由】
表面的な数字に騙されがちですが、実力ベースでの配当性向30.3%は、成長と還元のバランスが完璧です。資産売却益を配当に回さず温存しているのは、さらなる「大型M&A」や「不況時の盾」として機能するため、中長期的な安心感に繋がります。株主を裏切らない安定した還元姿勢を高く評価し、9点を維持します。
免責事項
本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を勧誘するものではありません。数値や分析は2025年10月発表の決算短信に基づいたAIによる解釈であり、将来の成果を保証するものではありません。投資は自己責任でお願いいたします。
(出典:富士通株式会社 2026年3月期 第2四半期決算短信)