こんにちは、makoです。
投資の世界には、世界中の投資家が血眼になってチェックする**「魔法の数字」があります。それがROE(アール・オー・イー:自己資本利益率)**です。
今回、富士通の決算データを分析して、私は思わず電卓を二度叩きました。
そこに表示された数値は、年率換算で約26%。
はっきり言います。この数字は、日本の巨大な製造業やIT企業が出せる数字ではありません。
**「異常」**です。
今回は、この26%という数字がどれほど物凄いことなのか、そしてなぜ私が「ありえない」と言い切るのか。その熱狂と冷徹な真実をお伝えします。
1. 「ROE 26%」はどれくらい凄いのか?
まず、この数字のインパクトを肌で感じてください。ROEとは「株主のお金を、1年間で何%増やせるか」という企業の利回りです。
① 「3年でお金が倍になる」魔法の杖
金融の世界には「72の法則」というものがあります。「72 ÷ 利回り」で、資産が倍になる年数が分かります。
ROE 26%で成長し続ける企業に投資するとどうなるか?
- 72 ÷ 26 ≒ 2.7年
たった2年9ヶ月で、あなたの資産は倍になります。
100万円投資したら、3年弱で200万円。6年で400万円。10年後には1000万円を超えます。
銀行の定期預金の金利が0.002%だとすると、倍になるのに3万6000年かかります。
富士通の26%は、銀行の1万倍以上のスピードでお金を増やしていることになります。まさに現代の「錬金術」です。
② 「投資の神様」を凌駕するスペック
世界一の投資家、ウォーレン・バフェットをご存知ですよね?
彼が投資先を選ぶ際、「合格ライン」とするROEの基準は**15%**と言われています。
15%でも十分「優良企業」で、めったに見つかりません。
今回の富士通の26%は、あのバフェットの合格ラインを遥かに飛び越え、神様すら「この株をくれ!」と土下座しかねないレベルの超・高収益です。
③ 一般人の3倍速で走る「モンスターマシン」
日本企業のROEの平均は、だいたい8%前後です(伊藤レポートの推奨値)。
平均的な企業が時速100kmで走っているとしたら、今の富士通は時速325kmで爆走している計算になります。
F1カー並みのスピードで利益を生み出している。それが「ROE 26%」の正体です。
2. なぜ「ありえない」と言い切れるのか?
ここまで聞いて、「すごい! 全財産を富士通に突っ込もう!」と思ったあなた。
ちょっと待ってください。
私が冒頭で「ありえない」と言ったのには理由があります。
通常、成熟した大企業が、特別な発明もなしに突然「F1カー」になることは物理的に不可能です。
実は、この26%には**「強力なドーピング」**が使われています。
ドーピングの正体:資産の「切り売り」
今回の純利益の内訳を解剖すると、驚くべき事実が分かります。
純利益2,620億円のうち、半分以上の約1,463億円が**「非継続事業」**からの利益です 1111。
これは、グループ会社だった**「新光電気工業」などの事業切り離しや、「富士通ゼネラル」の株を売却して得た約400億円の利益**が含まれているからです 2。
例えるなら、こういうことです。
「年収500万円のサラリーマンが、たまたま親から相続した実家を売って、その年だけ年収3000万円になった」
彼は確かにその年だけ「超・高収入(高ROE)」ですが、実家は一度しか売れません。来年の年収はまた500万円に戻ります。
この26%は、「一生に一度のボーナス」によって作られた幻の数字なのです。
3. 「化粧」を落とした素顔の実力は?
では、ドーピング(資産売却)を除いた、富士通の**「本当の実力」はどれくらいなのでしょうか?
これを見るために、「売上高調整後営業利益率」**という、ごまかしのきかない指標を確認します。
【本業の稼ぐ効率(調整後営業利益率)】
| 項目 | 昨年度(中間期) | 今年度(中間期) | 変化 |
| 売上収益 | 1兆5,521億円 | 1兆5,665億円 | ほぼ横ばい 3 |
| 調整後営業利益 | 660億円 | 1,213億円 | 約1.8倍 4 |
| 利益率(効率) | 4.2% | 7.7% | 劇的に改善! |
ここを見てください!
ROE 26%は幻でしたが、本業の利益率が4.2%から7.7%へ急上昇しているのは**「真実」**です。
日本のIT・製造業で、半年で利益率を3.5ポイントも改善させるのは、並大抵のことではありません。
これは、採算の悪い仕事を徹底的に減らし、稼げるDXサービス(Uvance)に集中した**「体質改善」が成功している証拠**です。
4. まとめ:あなたが明日から見るべきポイント
今回は「収益性分析」を通して、富士通の効率性を分析しました。
- **ROE 26%**は、「3年で資産が倍になる」ほどの異常値だが、資産売却による一時的なものなので信じてはいけない。
- しかし、本業の利益率は7.7%へと倍増しており、稼ぐ効率(IQ)は確実に高まっている。
- 「派手な純利益」ではなく、地味な**「営業利益率」の改善**こそが、株価を支える本当の力になる。
あなたへのアクションプラン(ベビーステップ)
この記事を読み終えたら、以下のことを1つだけ実行してください。
- 自分が気になる企業の「純利益」が急増している場合、その理由が「本業」か「資産売却(特別利益)」かを必ずチェックする。
決算短信の1ページ目を見るだけで分かります。「親会社株主に帰属する当期純利益」だけが異常に跳ね上がっていたら、それは「実家の売却」かもしれません。
次回予告:【安全性分析】自己資本比率と流動比率で、企業の「守りの硬さ」を徹底解剖
「攻める力(効率)」は分かりました。でも、攻めすぎて足元がおろそかになっていませんか?
第2回で「自己資本比率」には触れましたが、次回はさらに踏み込んで、**「1年以内に倒産するリスクはないか?」を見抜く「流動比率」**という指標を解説します。
富士通の「短期的な資金繰り」に死角はないのか? 徹底チェックします!
makoの投資判断:8/10点
【評価理由】
ROE 26%という数字は一時的な「お祭り」ですが、それを差し引いた本業の実力(調整後営業利益率 7.7%)が素晴らしいです。不採算事業を整理し、高収益なサービス事業へ転換する戦略が、数字として明確に成果を出しています。「見せかけの26%」ではなく「中身の7.7%」を評価して、8点としました。
免責事項
本記事は情報の提供を目的としており、特定の銘柄への投資を勧誘するものではありません。記事内で紹介している数値や分析は、富士通株式会社の2026年3月期第2四半期決算短信(2025年10月30日発表)に基づいたAIによる解釈であり、将来の成果を保証するものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断と責任において行ってください。
(出典:富士通株式会社 2026年3月期 第2四半期決算短信)