こんにちは、makoです。
「高配当株投資」がブームの今、多くの人が配当金を楽しみに株式投資をしています。 チャリン、チャリンと口座にお金が入ってくるあの瞬間は、投資家にとって最高の癒やしですよね。
しかし、もしあなたが「配当金生活」を夢見て買った株が、ある日突然**「ごめん、やっぱり今回は1円も払えない」**と言ってきたらどうしますか? 生活設計は狂い、株価は暴落し、まさにダブルパンチです。
今回分析するニデック(旧:日本電産)は、まさにその悪夢を現実にしました。 長年、成長と共に配当を増やしてきた優良企業が、今回の決算で**「中間配当 無配(0円)」**という衝撃の決定を下したのです。
「現金3,400億円もあるのに、なぜ?」 「株主を軽視しているんじゃないか?」
いいえ、違います。 これからお見せするシミュレーションを見れば、ニデックが**「配当を出したくても出せない、のっぴきならない状況」**に追い込まれていることが分かります。
今回は、ニデックの株主還元策を徹底解剖し、企業が「配当を止める時」の予兆と、その裏にある真実を学びます。
第1章:事実確認 ~ニデックの還元策はどう変わったか?~
まずは、感情論を抜きにして、決算短信に書かれている「決定事項(ファクト)」を確認しましょう。
【ニデック 株主還元の変更点】
- 中間配当:
- 予定:40円(分割前基準)
- 結果:0円(無配)
- 期末配当:
- 予定:40円(分割前基準)
- 結果:未定(白紙撤回)
- 自己株式の取得(自社株買い):
- 結果:中止(2025年5月に決議したものを途中でストップ)
【makoの翻訳】 「当初は年間80円配るつもりでしたが、前半の40円はナシにします。後半の40円も出せるか分かりません。ついでに、株価を支えるために自社株を買う約束もキャンセルします」
これが、ニデックが投資家に突きつけた現実です。
第2章:【独自試算】もし40円配当を出していたらどうなっていたか?
ここが今回の最大のハイライトです。 「現金があるんだから、予定通り40円払えばよかったじゃないか」 そう思う方もいるでしょう。
では、実際に40円配当を出した場合、いくらお金が必要なのか? 今回の稼ぎ(利益)と比較して計算してみましょう。
1. 配当総額のシミュレーション
配当は「発行済株式数」から「自己株式(金庫株)」を引いた株数に対して支払われます。
- 配当対象株数: 約11億4,631万株
- 1株配当: 40円
- 必要総額: 約459億円
2. 今回の利益との比較
次に、この半年間でニデックが稼ぎ出した最終利益(親会社株主に帰属する中間利益)と比べてみます。
- 今回の純利益: 約312億円
- 必要な配当金: 約459億円
お分かりいただけましたか? もし40円配当を出していたら、**「稼いだ利益をすべて吐き出しても147億円足りず、貯金を切り崩す」**ことになっていました。 これを専門用語で「配当性向147%(タコ配当)」と呼びます。タコが自分の足を食べるように、会社が身を削っている状態です。
3. 「20円(分割後)」なら払えたのか?
「いやいやmakoさん、株式分割したんだから、半分の20円なら払えたでしょ?」 確かに、20円なら総額は約229億円となり、利益(312億円)の範囲内に収まります。
しかし、それでも配当性向は約73%(229億÷312億)です。 通常、ニデックのような製造業の健全な配当性向は30%前後です。 現在のように「不正調査で過去の利益が消えるかもしれない」「銀行から監視されている」という非常事態において、稼ぎの7割以上を流出させることは、財務戦略上**「自殺行為」**に等しいのです。
ニデックが無配にした最大の理由は、ケチだからではなく、**「今の稼ぎ(利益312億円)では、配当を維持する体力が残っていなかったから」**なのです。
第3章:無配を決断させた「3つの恐怖」
利益不足に加えて、ニデックには配当を出せない「構造的な3つの理由」があります。これらは全て、第2回~第5回の分析と繋がっています。
恐怖①:銀行との「血の契約」違反
これが最も物理的な理由です。 第5回で解説した通り、ニデックは銀行と**「純資産を前年の75%以上に維持する」**という厳しい条件(コベナント)付きで、3,000億円の融資枠を確保しました。
- 仕組み: 配当金を払うと、その分だけ会社の「純資産」が減ります。
- リスク: 現在調査中の不正問題で、過去の決算訂正が入れば、純資産はさらに減ります。
もし、「配当による減少」+「決算訂正による減少」のダブルパンチで、純資産が「75%ライン」を割ってしまったら? その瞬間、銀行から「金返せ(期限の利益の喪失)」と言われ、会社は終わります。 ニデックにとって、配当を出すことは、倒産のスイッチを押すリスクを伴う行為だったのです。
恐怖②:違法配当(犯罪)になるリスク
二つ目は、法律の問題です。 会社法では、配当は「分配可能額(正しく計算された利益の蓄積)」からしか出してはいけないと決まっています。
現在、ニデックは「在庫評価の不適切会計」の疑いで調査を受けています。 もし調査の結果、「実は過去の黒字は嘘で、本当はずっと赤字だった」と判明したらどうなるでしょうか? 過去に積み上げたはずの「分配可能額」が消滅している可能性があります。
もし今、無理に配当を出してしまい、後から「実は配る原資がありませんでした」となったら、それは**「違法配当」**という犯罪になります。 経営陣は、この法的リスクを回避するために、調査結果が出るまでは財布の紐を縫い付けるしかなかったのです。
恐怖③:インサイダー取引リスク
自社株買いの中止も深刻です。 通常、株価が暴落した時は、会社が自社株買いをして支えるのがセオリーです。
しかし、今回はそれも中止しました。 理由は**「インサイダー取引規制」です。会社自身が「まだ公表していない重要な悪材料(調査結果の全貌)」を知っている状態で、自社株を売買することはできません。 自社株買いの中止は、「まだ世に出ていない、株価を動かすほどの重要な事実を会社は抱えている」**という自白に他なりません。
第4章:「未定」という言葉の重み
決算短信には、期末配当についてこう書かれています。
「現時点において、第三者委員会による調査…(中略)…未定としています」
これは投資家に対し、**「調査が終わるまでは、何も期待しないでくれ」と言っているのと同じです。 期末配当が復活するかどうかは、業績(いくら稼いだか)ではなく、「調査がいつ、どんな形で終わるか(純資産がどれだけ残るか)」**にかかっています。
- ベストシナリオ: 調査が早期終了し、影響が軽微で、銀行の許可が得られれば復配。
- ワーストシナリオ: 調査が長引き、過去の決算訂正で純資産が激減し、期末も無配。
現状では、経営陣にすらどちらに転ぶか分からないため、「未定」とするしかなかったのです。
第5章:まとめと次回予告
いかがでしたか? 「現金があるから配当が出る」という単純な図式が、有事の際には通用しないことが、数字の裏付けを持ってお分かりいただけたと思います。
今回のニデックの株主還元分析のポイントは、以下の3点です。
- 物理的に払えない:40円配当を出すと配当性向が147%(タコ配当)になり、今の利益水準では維持不可能だった。
- 無配は「生存本能」:銀行との契約(純資産維持)を守るために、1円たりとも純資産を減らせない状況にある。
- 法的リスクの回避:利益の正当性が揺らいでいる以上、配当を出すと「違法配当」になるリスクがあり、動くに動けない。
ニデックの「無配」は、投資家への裏切りであると同時に、**「会社を潰さないための、苦渋の正しい決断」**でもありました。 この嵐が過ぎ去るまで、インカムゲイン(配当)を期待することはできません。
【今日のアクションプラン(ベビーステップ)】
この記事を読み終えたら、ご自身の保有株の中に**「配当性向が100%を超えている(または赤字なのに配当を出している)」**企業がないかチェックしてください。 無理をして配当を出している企業は、何かあった時に真っ先に「無配・減配」に転落する予備軍です。 「配当の源泉は、健全な利益のみ」。これを肝に銘じましょう。
【次回予告】
「makoさん、配当も出ない、不正疑惑もある。今のニデックには良いところなしですね」 「株価も下がっているし、もう見限ったほうがいいのかな?」
そう判断するのは、まだ早いです。 腐ってもニデック。世界No.1のモーター技術と、AI時代に不可欠な製品群を持っていることは事実です。
次回、第7回は**【成長性・割安性分析】編です。 今の株価は、これだけのリスクを織り込んでもなお「高い」のか? それとも「バーゲンセール」なのか? PER(株価収益率)やPSR(株価売上高倍率)を使って、「今の株価に隠されたお得感(または割高感)」**を冷徹に計算します。
「みんなが恐怖で投げ売りしている時こそ、真の価値を見極めるチャンス」。 次回を読むと、あなたは暴落相場で「拾うべき株」と「捨てるべき株」が見分けられるようになります。お楽しみに。
【makoの投資判断スコア】 評価:1 / 10点 (理由:インカムゲイン(配当)の魅力が消滅し、保有する理由は「将来の株価回復」のみとなりました。しかし、今回の試算で「現在の利益水準では配当維持すら困難」という実力が露呈しました。さらに自社株買いすらできない現状は、まだ悪材料が出尽くしていないことを強く示唆しています。配当という「支え」を失った株価は非常に脆いです。復配の道筋が見えるまでは、投資対象から外すのがセオリーです。)
免責事項 本記事は、提供された2026年3月期第2四半期決算短信に基づき、情報の提供を目的としてAIが作成したものです。特定の銘柄への投資を推奨するものではありません。記載内容は作成時点のものであり、将来の成果を保証するものではありません。特に配当予想については「未定」であり、今後の会社の決定により変動する可能性があります。投資判断は、必ずご自身の責任において行ってください。