【住宅ローン革命】「家も残クレ」の時代が来る?国が銀行をバックアップする新制度と、賃貸にはない「3つの特権」

「正直、今のマンション価格、異常だと思いませんか?」

同世代の友人と飲むと、必ずと言っていいほどこの話題になります。都心に限らず、地方都市でも新築マンションの価格は高騰を続け、私たち40代が「普通のサラリーマン」として手の届く範囲を超えつつあるように感じます。

「子供のために部屋数は欲しい。でも、35年ローンで今の価格を組むと、定年後まで巨額の借金が残る……かといって、ずっと賃貸で家賃を捨て続けるのも不安だ」

そんな閉塞感が漂う中、最近ニュースで**「住宅版の残価設定型クレジット(残クレ)」**という言葉を耳にしたことはないでしょうか? さらに、国が動き出し、銀行に対して保険を掛けることでこの仕組みを普及させようとしているという報道です。

「車の残クレなら知ってるけど、家でやるの? それって結局、賃貸と変わらないんじゃ……?」

そう直感した方は鋭いです。しかし、実はこの仕組み、**賃貸とは似て非なる「資産形成の裏ワザ」**が含まれているのです。

今回は、国が本腰を入れる**「住宅版残クレ」と「銀行向け公的保険」の仕組み、そして多くの人が誤解している「賃貸との決定的な違い」**について、40代の視点から徹底的に解剖します。

そもそも「住宅版残クレ」とは何か?

まずは基本のおさらいです。車の「残クレ(残価設定型クレジット)」は一般的になりましたよね。

  1. 数年後(例えば5年後)の車の下取り価格(残価)をあらかじめ決める。
  2. 車両価格から「残価」を引いた金額だけを分割で払う。
  3. 5年後に「車を返却する」か「残価を払って買い取る」かを選ぶ。

これと同じことを、数千万円単位の「家」でやろうというのが「住宅版残クレ(残価設定型住宅ローン)」です。

従来のローンとの違い

通常の住宅ローンは、借入額のすべて(+利息)を完済することが前提です。35年かけて、壁のクロス一枚、基礎のコンクリート一粒まで自分のものにするために払い続けます。

一方、残クレ住宅ローンは**「将来の家の価値(残価)」をあらかじめ差し引いて、残りの「利用分」だけを払います**。

例えば、5,000万円のマンションを購入するとします。

  • 通常ローン: 5,000万円全額を返済。
  • 残クレ: 「30年後の価値は2,000万円」と設定されたら、差額の3,000万円分だけをローンで支払う。

毎月の返済額が劇的に下がるイメージが湧くと思います。そして期限が来たら、家を売却(返却)して精算するか、残価を払って住み続けるかを選びます。

「実質、賃貸と同じでしょ?」は大間違い。決定的な「3つの差」

ここで多くの人が抱く最大の疑問に答えましょう。

「将来返すかもしれないなら、賃貸で家賃を払うのと一緒じゃないか? わざわざ借金するリスクを負う意味はあるの?」

結論から言うと、「財布への影響」と「生活の質」において、両者は全くの別物です。

残クレには、賃貸には決して真似できない**「3つの特権」**が存在します。

違い1:最強の節税策「住宅ローン控除」が使える

これが最大の違いです。

賃貸の家賃は、毎月15万円払おうが20万円払おうが、単なる消費です。税金は1円も安くなりません。

しかし、残クレはあくまで「住宅ローン」の一種です。つまり、住宅ローン控除(減税)の対象になります。

年末のローン残高の0.7%が所得税などから戻ってくる制度を使えば、年間十数万円〜二十万円程度が手元に戻る可能性があります(※年収や制度要件による)。

「毎月の支払いが賃貸並みかそれより安く抑えられ、さらに年末に税金が還付される」。

このキャッシュフローの差は、10年、15年と積み重なると数百万円の差になります。これは賃貸派にはない、購入派だけの特権です。

違い2:住む家の「グレード(性能)」が段違い

賃貸物件は、オーナーが利益を出すためにコストを抑えて建てられることが一般的です(壁が薄い、断熱性が低いなど)。

一方、残価設定型ローンが適用される物件は、将来の価値を担保するために**「長期優良住宅」などのハイスペックな仕様**であることがほとんどです。

  • 断熱性・気密性: 冬暖かく、夏涼しい。光熱費が毎月数千円単位で安くなる。
  • 設備: 最新の食洗機や床暖房、広々としたキッチン。
  • 耐震性: 最高等級の安心感。

同じ「月15万円」を払うとして、「普通の賃貸マンション」に住むのと、「分譲仕様のハイスペック住宅」に住むのとでは、毎日の生活の質(QOL)が天と地ほど異なります。

違い3:「値上がり益」のチャンスがある(アップサイド)

賃貸は、周辺の不動産価格がどれだけ上がっても、あなたの資産にはなりません(むしろ更新時に家賃が上がるリスクがあります)。

しかし、残クレで購入した家はあなたの所有物です。もし契約期間終了時に、不動産市況が良くなっていて、**「市場価格 > 設定された残価」**となっていた場合、どうなるでしょうか?

その家を市場で売れば、差額はあなたの利益(キャピタルゲイン)になります。

  • 賃貸: 掛け捨て。何も残らない。
  • 残クレ: 基本は利用料だが、市況次第でボーナス(売却益)が出る可能性がある「宝くじ付き」。

もちろん逆のリスクもありますが、「利益が出る可能性がある権利」を持っているのは、所有者だけです。

【比較表】賃貸 vs 残クレ住宅ローン

項目一般的な賃貸残価設定型ローン (残クレ)
所有権大家さんあなた (自分)
住宅ローン控除対象外対象 (大きな節税効果)
固定資産税不要 (家賃に含まれる)必要 (自分で払う)
家のグレード賃貸仕様 (コスト重視)分譲仕様 (性能・快適性重視)
リフォーム原則不可自由 (ただし返却時に条件あり)
将来の利益なし (掛け捨て)あり (市場価格が高騰すれば売却益)
出口戦略引っ越すだけ売却/返却/買取 の選択が可能

国が「リスク」を肩代わり? 新制度の正体

「メリットは分かった。でも、30年後の家の価値なんて誰にも分からないじゃないか。暴落したら借金だけ残るのでは?」

その通りです。そこが最大のネックでした。銀行にとっても「30年後に担保割れしていたらどうするんだ」というリスクがあり、これまで積極的になれませんでした。

そこで登場したのが、今回の**「国による銀行向け保険」**というニュースの核心です。

仕組みの裏側:JTIと公的保証

報道によれば、国土交通省などは、この残価設定型ローンを普及させるために、銀行が抱える「将来の価格下落リスク」をカバーする保険制度の整備に動き出しています。

具体的には、「移住・住みかえ支援機構(JTI)」のような公的な性質を持つ機関が関わってきます。

  1. 銀行: ユーザーに「残価設定型ローン」を融資する。
  2. リスク: 将来、家の市場価値が設定した残価(借金の残り)を下回ると、銀行は損をする。
  3. 国の支援策: この「市場価値が残価を下回った分」に対して、保険金が出るような仕組みを作る。

つまり、銀行に対して**「もし将来、家の価値が暴落しても、その損は保険でカバーされるから安心して高い残価を設定していいよ」**とお墨付きを与えるわけです。

これにより、銀行は恐れずに「高い残価」を設定できるようになります。残価が高く設定されればされるほど、私たちが毎月支払う金額は安くなります。

40代にとっての「メリット」:人生の選択肢が増える

この仕組みは、私たち40代のライフスタイルに非常にマッチしています。

1. 毎月のキャッシュフローが劇的に改善する

5,000万円の物件でも、実質3,000万円分の返済で済むなら、月々の支払いは数万円単位で安くなります。

浮いたお金を、教育費やiDeCo、NISAなどの老後資金形成に回すことができます。「家にお金を吸い取られて教育費が出ない」という本末転倒な事態を防げます。

2. 「家に縛られない」生き方ができる

35年フルローンを組むと、転職や移住、親の介護などで引っ越す必要が出た時に「売るに売れない(残債が売却額を上回るオーバーローン)」状態になりがちです。

残クレの場合、あらかじめ「定年時には家を手放して清算する」という出口が見えています。「子供が巣立ったら、広い家はいらない。夫婦でコンパクトな街中のマンションに移る」というダウンサイジングがスムーズになります。

知っておくべき「落とし穴」とリスク

ここまで良いことづくめに聞こえますが、当然リスクやデメリットもあります。

1. 「自分のもの」にはならない(かもしれない)

残クレはあくまで「支払いの先送り」です。設定期間終了後、住み続けるには「残価」を一括で払うか、再びローンを組む必要があります。「老後は家賃を払いたくないから持ち家」という従来の感覚でいると、最後に大きな支払いが待っていることに愕然とするかもしれません。

2. 維持管理のハードルが高い

将来、価値がある状態で返却することが前提なので、家のメンテナンスに対する要求が厳しくなります。

「壁に穴を開けた」「定期点検をサボった」などが原因で、将来の査定額が下がる可能性があります。自分の家なのに、どこか「管理されている」感覚になるかもしれません。

3. 金利リスク

残クレ住宅ローンは、通常の住宅ローンよりも金利がやや高めに設定される傾向があります。また、変動金利の場合、将来の金利上昇リスクは当然負うことになります。

シミュレーション:40歳・年収600万円のケース

少し具体的な数字でイメージしてみましょう(※あくまで概算シミュレーションです)。

  • 物件: 4,500万円の新築マンション
  • 年齢: 40歳

【プランA:通常ローン(35年変動0.5%)】

  • 月々返済:約11.7万円
  • 完済時:75歳(定年後も15年支払いが続く)
  • リスク: 老後破産の可能性あり。

【プランB:残クレ(残価設定40%、金利1.0%と仮定)】

  • 残価設定額:1,800万円(この分は最終回払い)
  • 実質融資額:2,700万円
  • 月々返済:約8〜9万円(+残価分の利息払い等の条件による)
  • 戦略: 浮いた月3万円をNISAで年利4%運用 → 20年で約1,100万円の資産に。

この1,100万円と、退職金などを合わせれば、住み替え資金も十分に作れます。「家にお金を固定させず、手元で運用する」という選択肢が生まれるのです。

まとめ:新しい「住まい」のOSへアップデートせよ

国が銀行に保険を掛けてまで推進しようとしている「残クレ住宅ローン」。これは、日本の住宅市場が「作っては壊すフロー型」から「良いものを長く使うストック型」へ転換するための国家プロジェクトの一端です。

そして私たちユーザーにとっては、「賃貸の手軽さ」と「持ち家の税制優遇・資産性」のいいとこ取りを狙える、第3の選択肢となり得ます。

  • 賃貸派の人: 「税金が戻ってくる」「グレードの高い家に住める」メリットを考えてみてください。
  • 持ち家派の人: 「一生住まなくてもいい」「出口が決まっている安心感」を知ってください。

重要なのは、制度の仕組みを正しく理解し、自分のライフプランに合わせて使いこなすこと。「知らなかった」で損をするのが一番もったいない。

もし、これからマイホームを検討するなら、銀行の窓口で「残価設定型のプランはありますか? 住宅ローン控除はどうなりますか?」と聞いてみてください。その一言が、あなたの老後の安心を変えるかもしれません。

「家を買う」から「住まいという機能を賢く調達する」へ。

頭のOSをアップデートして、この高騰時代をサバイブしていきましょう。

【免責事項】 ※本記事は執筆時点(2025年12月)の情報および一般的な仕組みに基づいて作成されています。個別の金融機関の商品内容や、国の制度の詳細・開始時期については、必ず最新の公式サイトや窓口でご確認ください。本記事は特定の金融商品の勧誘や、将来の運用成果を保証するものではありません。投資や契約の最終判断はご自身の責任で行ってください。

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