皆さん、こんにちは!
「テスト範囲の年号、全部覚えなきゃ!」 「あの芸能人の不倫ニュース、詳細まで知ってるよ」 「友達のインスタの投稿、全部チェック済み!」
私たちの脳には、毎日ものすごい量の情報が流れ込んできます。真面目な人ほど、それら全てを「記憶しなきゃ」と無意識に頑張ってしまいがちです。でも、ちょっと待ってください。もしあなたの脳が、大切な宝石も、道端のゴミも、一緒くたに詰め込まれた「汚部屋」のようになってしまっていたら?
300年前に生きたアイザック・ワッツは、記憶力を高めるための重要な秘訣として、「記憶を無駄なもので過負荷にしないこと」 を強く警告しています。
今回は、限られた脳の容量を最大限に活かすために、情報を賢く「選別」し、あえて「覚えない」という選択をする勇気についてお話しします。
あなたの脳は「倉庫」ではなく「リビング」だ
ワッツは、「不必要な事柄、無益な話、些細な出来事で記憶を埋め尽くしてはいけない」 と言います。なぜなら、人間の記憶容量には限界があるからです(少なくとも、瞬時に取り出せる「ワーキングメモリ」には明確な限界があります)。
あなたの脳を、家の「リビングルーム」だと想像してみてください。 そこは、あなたが快適に過ごし、大切な友人を招くための空間です。そこに、チラシの裏、コンビニのレシート、どうでもいいゴシップ記事などを山積みにしていたらどうなるでしょう? 足の踏み場もなくなり、本当に大切な「宝物」や、必要な「道具」がどこにあるか、分からなくなってしまいますよね。
記憶力が良い人とは、何でも覚えている人のことではありません。 「脳(リビング)に入れるべき重要な情報」と、「ノートやスマホ(倉庫)にしまっておく情報」を、玄関先で厳しく「選別」できる人のことなのです。
「ゴミ情報」を脳に入れないためのフィルター
では、ワッツの教えに基づき、脳に入れるべきでない「ゴミ情報(とまでは言わずとも、優先度の低い情報)」を見極める基準を作りましょう。
- 「検索すれば1秒で分かること」は覚えない ワッツは、「本を見ればすぐに分かるような詳細な事柄」 を無理に記憶する必要はないと説いています。 現代なら、正確な数値、細かい住所、単なるデータの羅列などです。これらは「覚える」のではなく、「どこに書いてあるか(情報のありか)」だけを覚えておけば十分です。脳のメモリを無駄遣いするのはやめましょう。
- 「感情を汚染するもの」は入れない 他人の悪口、ネガティブなニュース、嫉妬心を煽るSNSの投稿。ワッツは**「心を堕落させるような事柄」** を記憶から排除すべきだと考えていました。これらは脳のリソースを食うだけでなく、第20回で学んだ「心のOS」にもウイルスとして作用します。これらは「見ない」「聞かない」「すぐに忘れる」のが正解です。
- 「将来の役に立たない雑学」はほどほどに もちろん、趣味の雑学は楽しいものです。しかし、テスト前などの重要な時期に、ゲームの細かいステータスや芸能ニュースを詰め込むのは、リビングに大量のオモチャを広げているようなもの。今は片付けて、脳のスペースを空けましょう。
「外部メモリ」を使いこなす賢さ
「でも、書いただけじゃ忘れちゃうよ…」と不安になるかもしれません。 しかし、ワッツはこう言います。「記憶を助ける最良の方法の一つは、ペンを手にして学ぶことである」。
これは、「書いて覚える」という意味だけでなく、「紙(ノート)を第2の脳として使う」 という意味も含まれています。 重要な公式や単語は、何度も復習して脳(リビング)に定着させる(第25回参照)。 一方で、細かい補足情報やデータは、ノート(倉庫)に整理して書き留めておく。
「忘れてもいい」と思えることは、脳にとってものすごい解放感です。 「これはノートに書いてあるから、今は忘れよう!」と許可を出すことで、脳は空いたリソースを、本当に理解すべき「思考」や「重要事項」に全集中させることができるのです。
まとめ:捨てる勇気が、記憶を鋭くする
今回は、脳をゴミ屋敷にしないための「情報の断断捨離」についてお話ししました。
ポイントを振り返ってみましょう。 第一に、脳の容量は限られている。何でも詰め込むのではなく、「脳に入れる情報」を厳選すること。 第二に、検索すれば分かることや、心を汚す情報は、あえて「覚えない」という勇気を持つこと。 第三に、ノートやスマホを**「外部メモリ(倉庫)」**として活用し、脳(リビング)を常に快適な状態に保つこと。
「忘れるのが怖い」から「覚えよう」とするのではありません。「本当に大切なことを鮮明に覚えておく」ために、それ以外のことは「あえて忘れる(外部に預ける)」のです。その身軽さこそが、あなたの知性をより鋭く、スピーディーにしてくれます。
【明日からできるアクションプラン】 今日、勉強や生活の中で「これ、別に覚えなくてよくない?」と思うことを一つ見つけてください。(例:歴史の教科書の脚注の細かい年号、友達が話していた噂話の詳細)。 そして、それをメモ帳に書き出すか、あるいは「よし、これは忘れる!」と心の中で宣言して、脳内からゴミ箱アイコンへドラッグ&ドロップするイメージを持ってください。脳が少し軽くなる感覚を味わってみましょう。