【保存版】「7年目以降の車検」に怯えるな。ディーラーが教えない「現金・中古・乗り潰し」が最強の資産防衛策である理由

先日、車の買い替えを検討してディーラー数社を回ってきました。 愛車の走行距離も伸びてきたし、そろそろ潮時かな、と。軽い気持ちで足を踏み入れたのですが、そこで待っていたのは「買い方の多様化」という名の迷宮でした。

営業マンは笑顔でこう言います。 「今は現金で買う方なんて少ないですよ。残クレなら月々こんなに安いです!」 「7年目以降は車検も高くなりますし、故障も増えます。その前に新車のサブスク(リース)にしませんか?」

提示された見積書を見ると、確かに残クレやリースの月々の支払額は魅力的です。「これなら、今の予算でワンランク上のSUVに乗れるかも?」なんて、一瞬心が揺らぐのも無理はありません。

しかし、ちょっと待ってください。私は40代、これまでそれなりに社会の荒波と家計のやりくりを経験してきました。営業マンの笑顔の裏にある「数字のからくり」と、将来待ち受ける「隠れたコスト」を見過ごすわけにはいきません。

今回は、私がディーラーの提示額をもとに電卓を叩きまくり、さらに整備士の知人にも裏事情を取材して導き出した、**「感情抜きの、最も経済合理性の高い車の買い方」**について、皆さんとシェアしたいと思います。

結論から言います。 「見栄を張らず、質の良い中古車(または新車)を現金一括で買い、適切なメンテをしながら15年乗り潰す」

これ以外に、あなたの資産を守る道はありません。

1. 「車好き」の方へ:悪気はありません

本題に入る前に、一つだけ大切なことをお伝えしておかなければなりません。 ここからの話は、あくまで**「経済合理性(お金の損得)」**だけに焦点を当てた、極めてドライなシミュレーションです。

もしあなたが、 「車が大好きでたまらない」 「最新のモデルに乗ることが人生の喜びだ」 「憧れのあの車に乗るために仕事をしている」

という「車好き」の方であれば、この記事の内容は聞き流してください。決して悪気があって言っているわけではありません。 趣味や生き甲斐にお金を使うことは、「浪費」ではなく、人生を豊かにするための素晴らしい「投資」です。好きな車にお金をかける喜びは、数字では測れません。その価値観を否定するつもりは毛頭ありません。

ただ、もしあなたが「車には特にこだわりがない」「あくまで移動手段だ」と考えているのに、営業トークに乗せられて高い新車を買おうとしているなら……今回の記事は、あなたの資産を守る強力な盾になるはずです。 この記事は、車を「道具」として割り切る人のための戦略書としてお読みください。

2. 「残クレ」と「リース」の甘い罠

では、数字の話に入りましょう。まず、最近のディーラーが猛烈にプッシュしてくる「残価設定型クレジット(残クレ)」と「カーリース」について整理しましょう。

残クレの正体は「金利地獄」 「3年後、5年後の下取り価格(残価)を据え置いて、残りの部分だけを払うから安い」というアレです。 例えば、300万円の車で、5年後の残価が100万円だとします。残りの200万円だけを5年で払えばいいから、月々の負担は軽い。一見、理にかなっています。

しかし、ここには強烈な罠があります。 **「金利は、据え置いた残価(100万円)に対してもガッツリかかっている」**という事実です。 多くの人が誤解していますが、利息は「月々支払っている部分」だけに掛かるのではありません。「借りている元本全体」に掛かります。つまり、あなたは支払いを先送りした100万円に対しても、5年間ずっと金利を払い続けているのです。 さらに5年後、車を返却するか、残価を一括で払うか、またローンを組んで新車にするかの選択を迫られます。多くの人が「また月々払えば新車に乗れますよ」という言葉に流され、一生ローンを払い続ける「自動車サブスク貧乏」に陥ります。

リースは「割高な代行サービス」 リースは税金や車検代がコミコミで楽ですが、リース会社もビジネスです。車両代+維持費に、しっかり「利益」と「金利相当額」を乗せています。自分で車検業者を探す手間をお金で解決しているだけなので、総支払額は間違いなく高くなります。

3. 最強の戦略「現金一括 × 乗り潰し」

では、どうすればいいのか。答えはシンプルです。「現金一括」で購入し、廃車になるまで10年、15年と「乗り潰す」ことです。

理由は**「減価償却」**にあります。 車は、新車登録から3年〜5年で価値が約半分になり、10年経てばほぼゼロに近づきます。

  • 5年ごとに買い替える人: 常に「価値が急激に下がる時期」の車にお金を払い続けています。300万円で買い、5年後に100万円で売る。5年間で200万円(年間40万円)の車両コストを捨てている計算です。
  • 15年乗り潰す人: 300万円で買い、15年乗る。15年後の価値は0円。300万円を15年で割ると、年間の車両コストは「20万円」です。

この差は年間20万円。30年間で600万円もの差がつきます。これが「乗り潰し」が最強である所以です。

4. 「7年目以降の車検が高くなる」説の真実

ここで必ず出てくるのが、「でも長く乗ると車検が高くなるじゃん! 7年目以降は維持費がヤバいって聞くよ」という反論です。 ここを明確にしておきましょう。多くの人が「税金」と「整備費」を混同しています。

① 税金が高くなるのは「13年後」から まず、税金についての誤解です。自動車重量税が重くなる(増税される)のは、新車登録から13年経過後18年経過後です。7年目や9年目で税金が上がることはありません。ですから、税金を理由に7年目で手放すのはナンセンスです。

② 「高くなった」と感じる正体は消耗品と保証切れ 7年目以降の車検が高くつく本当の理由は、整備代です。 一般的に、新車のメーカー保証(特別保証)は「5年または10万キロ」で切れます。つまり、3回目(7年目)以降の車検では、故障修理が全額実費になります。

さらに、7年目以降(走行距離5〜10万キロ)は、車にとって「健康診断と治療」が必要な時期に入ります。

  • タイヤ(ゴムの硬化・ひび割れ・摩耗)
  • バッテリー(特にアイドリングストップ車用は高価)
  • ブレーキ周り(パッドの摩耗、ディスクの研磨や交換)
  • 足回りのゴム部品(ブッシュ、ブーツ類の亀裂、ショックアブソーバーの抜け)
  • 水周り(ウォーターポンプからの滲みなど)

これらは7年目だけでなく、9年目、11年目と、走行距離に応じて順番に交換時期が訪れます。ある車検では15万円、次の車検では12万円といった具合に、確かに新車時より維持費はかかります。

③ それでも「直して乗る」が圧倒的に安い ここが最重要ポイントです。 仮に7年目以降、車検のたびに毎回15万円〜20万円の整備費がかかったとしましょう。 「うわ、高い!」と思いますか?

しかし、新車に買い替えたらどうなるでしょうか。300万円の新車を買えば、最初の数年で年間数十万円分の価値が消滅します。ローンの金利もかかります。 「車検ごとの20万円」と「買い替えによる数百万円の出費」。どちらが家計へのダメージが少ないかは明白です。 この整備費は、損出ではなく、車を長く安全に使うための「必要経費」です。適切に部品を交換すれば、現代の車は驚くほど長く走ります。

5. 賢い「中古車」の選び方と「機関の調子」

さらに経済性を高めるなら、新車ではなく**「中古車」を狙うのが賢明です。 狙い目は「登録から3年〜5年落ち」**。最初のオーナーが高い減価償却費を払ってくれた後の車を、半額近くで手に入れる戦略です。

中古車選びや、長く乗る愛車の状態で最も重要なのが**「機関の調子」です。 これは、内装の汚れやボディの小傷ではなく、車として走るための「心臓部(エンジン)や駆動系(トランスミッション、エアコン等)の機械的な状態」**を指します。

今の日本車は非常に優秀ですが、メンテナンスフリーではありません。

  • エンジン音: 異音(カラカラ、キンキン音)がせず、スムーズに回っているか。
  • アイドリング: 信号待ちなどで回転数がブレず、安定しているか。
  • 変速ショック: アクセルを踏んだ時、ガクンという不快な揺れがないか。
  • エアコン: 冷房がしっかり効くか(コンプレッサーの異音がないか)。

これらが正常であれば、走行距離が5万キロや7万キロを超えていても全く問題ありません。「機関の調子」さえ良ければ、現代の車は15万キロ、20万キロまで余裕で走ります。 逆に、見た目がピカピカでも、オイル交換がおろそかにされていた車は避けるべきです。整備記録簿を見て、定期的に(半年〜1年ごと)オイル交換されているかを確認しましょう。

また、「不人気色(シルバーなど)」や「セダン」など、リセールバリューが悪い車種を選ぶとさらにお得です。「売る時に安い車」は「買う時も安い車」です。乗り潰すなら売却価格を気にする必要はありません。

6. 新たなリスク:「先進安全装備」と「OBD車検」

最後に、これから車を長く乗る上で避けて通れない、現代特有のリスクについて触れます。 それが、**「センサー類の故障」「OBD車検」**です。

昔の車はエンジンとタイヤさえ無事なら走れましたが、今の車は「走るコンピューター」です。自動ブレーキやレーンキープアシストのために、カメラやレーダーが満載されています。

リスク①:ちょっとした接触が高額修理に 軽くバンパーをぶつけただけでも、内部のセンサーがズレると、その交換と調整(エーミング)に10万円以上かかることがあります。

リスク②:センサーが壊れると車検に通らない(OBD車検) 2024年10月から順次開始されている「OBD車検(OBD検査)」により、車のコンピューターに「自動ブレーキ等の異常」が記録されていると、車検が不合格になります。 エンジンは絶好調でも、電子部品が壊れて車検に通らない、という事態が起こり得ます。

したがって、これからの「乗り潰し戦略」には、以下の備えが必要です。

  • 7年目以降は、修理費用の積立をしておく(車貯金)。
  • 中古車を買う際も、センサー類に異常がないか診断してもらう。

電子部品の寿命は読みづらいですが、それでもトータルコストで見れば、高頻度で新車を買い替えるより、直しながら乗る方が圧倒的に安上がりであることに変わりはありません。

まとめ:40代からの賢い選択

ここまでの話をまとめます。

  1. 車好きの方は除外。趣味ならお金をかけるべき。
  2. 基本は「現金一括」。金利を払うのは資産形成の敵です。
  3. 新車・中古車問わず、タイヤが外れるまで長く乗る。
  4. 「7年目以降の車検が高い」は、減価償却費に比べれば微々たるもの。 修理して乗る方が、トータルコストは確実に安い。
  5. 「機関の調子(エンジン等の状態)」が良い車を見極め、オイル管理を徹底する。
  6. 「車は移動手段」と割り切れるなら、不人気色やセダンが最強のコスパ。

車は、私たちを目的地へ運んでくれる素晴らしい道具であり、家族との思い出を作る空間です。しかし、家計にとっては資産ではなく、あくまで「消費財」です。 「月々の支払い」というマジックに惑わされず、「トータルでいくら払うのか」を常に見つめてください。

ボロボロになるまで乗り倒したその車は、あなたの見栄を満たすことはないかもしれませんが、あなたの銀行口座と家族の将来を確実に守ってくれる「頼もしい相棒」なのです。


免責事項

本記事の内容は、筆者の個人的な経験、取材、および執筆時点(2025年)での一般的な情報に基づくシミュレーションです。全ての車種・ディーラー・契約条件・法制度の変更に完全に適合することを保証するものではありません。特にOBD検査の対象車種や開始時期、判定基準については、国土交通省や整備工場の最新情報をご確認ください。実際の購入や契約、車両の維持管理にあたっては、必ずご自身で専門家に相談の上、判断してください。本記事の情報に基づいて被ったいかなる損害についても、筆者は一切の責任を負いません。

【関連リンク】 さらに詳しい節約術や資産運用のヒントについては、こちらのブログもぜひご覧ください。 https://kotodamablog.sakura.ne.jp/wordpress/

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