第22回 集中力を手に入れよう(2):勉強が「好き」になる魔法

皆さん、こんにちは!

前回の記事では、私たちの集中力を奪う「敵」の正体(スマホやゲームがもたらす「感覚的な欲望」)について探りました 。多くの人が「敵の正体は分かった。でも、嫌いな科目を前にすると、どうしても集中できない!」と悩んでいるかもしれません。「意志の力で誘惑と戦え!」と言われても、辛いだけですよね。

もし、その「意志の力」に頼らなくても、自然と勉強に没頭できてしまう「魔法」があるとしたら? 300年前、アイザック・ワッツは、その最強の集中術を、驚くほどシンプルな言葉で示していました。それは…**「勉強を『好き』になってしまうこと」**です。

今回は、この「好きになる」という、一見難しそうな心理テクニックを使いこなし、苦手科目さえも克服するヒントを探っていきましょう。

「好き」は「意志」に勝る、最強の集中エンジン

考えてみてください。あなたが大好きなゲームをしている時、夢中になっている趣味の動画を見ている時、「よし、今から集中するぞ!」と気合を入れる必要はありますか? ないですよね。なぜなら、あなたはそれを「好き」だから。脳が「楽しい!」「もっと知りたい!」と感じている時、集中力は勝手に、しかも無限に湧き出してくるのです。

アイザック・ワッツは、この人間の本質を完璧に理解していました。彼が挙げた「集中力を高めるための規則」の、まさに第一番目が**「追求する知識の研究を好きになること」** だったのです。

彼は、「意志の力」で欲望と戦うという不毛な戦いを強いる代わりに、「欲望」そのものをハックしてしまう道を指し示しました。「スマホやゲームがしたい」という欲望よりも、「勉強がしたい」という欲望が強くなれば、問題は解決する、と。

「どうでもいい」を「面白いかも?」に変える3つのスイッチ

「それができたら苦労しないよ!嫌いなものは嫌いなんだ!」 その通りです。数学が苦手な人が、明日から急に数学を愛することはできません。 しかし、ワッツの教えは、この「好き」という感情を、もっと深く、多角的に捉えています。彼が言う「好き」とは、恋に落ちるような激しい感情だけではありません。それは、知的な活動から得られる、静かで、しかし確かな「喜び」のことなのです。

ワッツは、私たちが勉強に心を集中させるための「喜び」として、3つのヒントを挙げています

  • スイッチ①:「解けた!」の喜び(知的能力の行使の喜び) ワッツは、「知的能力の行使の喜び」 を集中力の源泉としています。これは、難しいパズルや謎解きが解けた時の、「やった!」「分かった!」という快感のことです。 苦手な数学の問題も、「苦痛な作業」と捉えるのではなく、「解けるかどうかの挑戦状」「脳の筋トレ」と捉え直してみましょう。最初は簡単な問題でも構いません。自分の力で「解けた!」という小さな成功体験を積み重ねる。その「アハ体験」こそが、脳にとって最高の報酬となり、「数学、ちょっと面白いかも?」という「好き」の入り口になるのです。
  • スイッチ②:「なるほど!」の喜び(真理と知識の神聖な喜び) ワッツは、「真理と知識の神聖な喜び」 も挙げています。これは、今まで知らなかったことを知る喜び、バラバラだった知識がつながる「なるほど!」という感覚のことです。 例えば、歴史の年号をただの暗号として覚えるのは苦痛です。しかし、「なぜ、その年にその事件が起きたのか?」という背景を調べ、人物たちの思惑が絡み合う壮大なドラマとして理解した時、歴史は「なるほど!」の連続に変わります。この「知る喜び」は、あなたの知的好奇心を強烈に刺激し、集中力を引き出してくれます。
  • スイッチ③:「未来」とつながる喜び(未来への奉仕の希望) 最後にワッツは、「未来への奉仕の希望」 によって心を集中させることを勧めています。これは、その学びが、将来の自分の役に立つ、あるいは誰かのためになるという「希望」のことです。 「何のためにこんな勉強を…」と感じる苦手科目も、未来の自分とつなげてみましょう。 「英語が苦手」→ でも、話せたら、好きな海外アーティストのインタビューが直接理解できるかも。 「化学が意味不明」→ でも、この知識が、将来自分が好きな化粧品や食品の開発につながっているのかも。 その学びが、あなたの「希望」や「夢」と一本の線で結ばれた時、退屈だった記号の羅列は、未来への「切符」に変わるのです。

「イメージ」の力で、「好き」を加速させる

さらにワッツは、集中するための具体的なテクニックとして、「説明のために感覚的なものや具体的なイメージを用いること」 も勧めています。 苦手な科目というのは、えてして抽象的で、自分とのつながりが見えないものです。 そんな時は、その無機質な情報を、五感で感じられる「イメージ」に変換してしまいましょう。 歴史の出来事を、自分を主人公にしたマンガや映画のワンシーンとして想像してみる。 化学の分子記号を、カラフルなレゴブロックがくっついたり離れたりする様子としてイメージする。 このように「感覚化」することで、退屈だった勉強対象は、あなたの脳にとって、より魅力的で「とっつきやすい」存在に変わるのです。

まとめ:集中力は「意志」でなく「設計」するもの

今回は、「嫌い」を「好き」に変えることで、最強の集中力を手に入れる方法についてお話ししました。

ポイントを振り返ってみましょう。 第一に、集中力の最強のエンジンは「意志の力」ではなく、「その対象を好きになること」である 。 第二に、その「好き」とは、「解けた!」という達成感 や、「知った!」という知的な喜び 「未来の役に立つ!」という希望 によって育むことができる。 そして第三に、抽象的な情報を具体的な「イメージ」 に変換することが、対象に親しみを持ち、「好き」になる手助けをしてくれること。

集中力とは、根性でひねり出すものではありません。どうすれば自分の脳が「面白い!」と感じてくれるか、その環境やアプローチを賢く「設計」するものです。ワッツの知恵を借りて、あなたの脳を「ダマして」でも「その気」にさせてしまいましょう。

【明日からできるアクションプラン】 あなたの最も苦手な科目を一つ、思い浮かべてください。そして、その科目について、たった一つでいいので「これ、面白いかも?」と思えるポイントを探してみましょう。 「この数学者の人生、意外と波乱万丈だ」「この英文のテーマ、ちょっと深いかも」「この化学物質、日常生活のあそこに使われてるんだ!」 その小さな「面白いかも?」こそが、あなたの「嫌い」を「好き」に反転させる、魔法の第一歩です。


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